写真●パネルディスカッション「かながわ発!エネルギー革命」
写真●パネルディスカッション「かながわ発!エネルギー革命」
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 今後の街づくりと人間らしい生活、そこに必要なエネルギーの確保――。これらに向けた課題や可能性はどこにあるのか。地方自治体の首長から,エネルギーやスマートシティ関連分野のキーパーソンが、パシフィコ横浜で開催中の「Smart City Week 2012」(主催:日経BP社、特別協力:横浜市、10月29~11月2日開催)における自治体セミナー「かながわ発!エネルギー革命」のパネルディスカッションに登壇。エネルギーを中心に、これからの街づくりについて議論した。

 パネリストとして登壇したのは、東海大学 工学部 教授で神奈川県参与の内田裕久氏と、東京工業大学 特命教授で先進エネルギー国際研究センター長の柏木孝夫氏、パナソニック代表取締役副社長・エコソリューションズ社 社長の長榮周作氏、ガイア・イニシアティブ代表の野中ともよ氏、東京ガス代表取締役副社長の村木茂氏である。司会は,神奈川県知事の黒岩祐治氏が務めた。

 神奈川県は現在、「かながわスマートエネルギー構想」を進めている。議論は、その実現に向けた課題や、国のエネルギー政策の見直しを受けて、今後どのように推進していくべきかという立場から繰り広げられた。パネリストは、技術者や研究者、キャスター、経営者といったパネリストの多種多様な背景をもとに環境・エネルギーの課題にかかわってきた。それだけに、技術観から文化人類学的な意見まで幅広い話題が飛び交った。

 議論の中心となった内容は大きく二つある。スマートシティにおけるエネルギーのあり方と、人間の生き方を優先した技術の使い方である。前者については、東京ガスの村木氏が「当社はガス会社ではあるが、ガスにこだわらないエネルギー供給を模索し始めるなど、今後の社会の進み方に合わせた取り組みを強めていく。エネルギーにおけるパラダイムシフトに立ち会っている覚悟で、街づくりと一体化したエネルギー供給の確立に努めていく」と語った。

 また「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)などのエネルギーマネジメントの手法について、パナソニックの長榮氏は、「現状はエネルギー・マネジメント・システム側がアクティブに制御する技術ばかり活用が進みつつある。今後は、自然の力をパッシブに使いこなしていくような、例えば採光のような技術の活用が進んでいくかもしれない」との見方を示した。

 こうした中、ガイア・イニシアティブの野中氏が、「東日本大震災にともなう原子力発電所の事故が我々に突きつけてきたのは、エネルギーの問題ではなく,人間としての生き方の問題だ」と投げかけ、技術の活かし方そのものを問う議論が進められた。

 これに対し東海大学の内田氏は、「地球上にある様々な価値観に対し、従来の日本では、物質、技術、情報通信に基づく価値観や社会づくりを進めてきたのかもしれない。今後は、人の暮らしや命を科学や技術の中に落とし込んでいくことが、社会や技術の持続性にとって重要となってくるだろう。『疲れた』などという人間の揺れる感情まで考慮されるようになることで、技術の切り口も広がってくる」とした。

 東京工業大学の柏木氏も、「本来は、命を真ん中に様々な要素がつながることで、技術や社会が形成されている。こうした観点から,エネルギーや技術の活用の仕方を磨き上げたい。海から平地、山までの多様な地形と、様々な人々産業がそろっている神奈川においては、エネルギー革命の社会実証から社会への実装へと、つなげてほしい」と語った。