写真●米EMCの会長 兼 CEO、ジョー・トゥッチ氏
写真●米EMCの会長 兼 CEO、ジョー・トゥッチ氏
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 米EMCの会長兼CEO(最高経営責任者)であるジョー・トゥッチ氏の来日に伴い、2012年10月29日、同氏の来日記者会見が開催された(写真)。トゥッチ氏は、同社事業の柱のひとつとなるクラウドコンピューティングについて語った。

 トゥッチ氏はまず、CIOが抱える課題として、ITの維持管理費がシステム予算の73%に達しており、新規投資に費やせるのは残りの27%のみというForrester Researchの調査結果を引用。さらに、企業が抱えるデータ量が増大していること、常にセキュリティ面の脅威に危険にさらされていることを挙げ、「こうした課題をクラウドコンピューティングが解決する」とした。

 では、クラウドコンピューティングへのステップはどのように進むのか。トゥッチ氏は、「標準化」「仮想化」「自動化」という3つのステップで進んでいくと見る。

 「アマゾンやグーグルをはじめとするほとんどのパブリッククラウドは、x86のプラットフォームですでに標準化されている。世界のサーバー出荷台数の90%以上はx86サーバーが占め、売上高も70%近くに達している」(トゥッチ氏)。標準化が進めば、次は仮想化だ。「これまではアプリケーションが必要なインフラをあらかじめ専有していたが、インフラが仮想化された世界では、必要に応じてインフラがアプリケーションに提供される」(同)。最後が自動化だ。「ネットワーク、ストレージ、サーバーといった様々な管理レイヤーを持つのではなく、クラウド上で多くの管理機能が自動化されるようになる」(同)。

 この3つのステップでクラウドコンピューティングが実現した後には、「Software-Defined Data Center(ソフトウエアが定義するデータセンター)がある」とトゥッチ氏は語る。Software-Defined Data Centerの世界では、ストレージ、ネットワーク、セキュリティなどがすべて仮想化され、管理ツールも自動化されるという。

 従来の環境では、アプリケーションとインフラがひも付いており、アプリケーションの負荷のピークに合わせてインフラを構築する必要があった。だが、「Software-Defined Data Centerの世界では、インフラとアプリケーションは分離される。アプリケーションがSoftware-Defined Data Centerとコミュニケーションしつつ、必要なサービスレベルやポリシー、コスト制約などに従って、リソースを確保する」とトゥッチ氏は説明した。

 トゥッチ氏は、IT業界には常に新たな波が押し寄せ、メインフレームからミニコンピュータ、PC、クライアント・サーバー、分散コンピューティング、クラウドコンピューティングへと変革を続けてきたと話す。「こうした波は破壊力があり、同時に新たなビジネスチャンスが伴っていた。例えば、ミニコンピュータのメーカーは20社ほど存在したが、いまでは1社も残っていない。このような破壊的な波があったからこそ、マイクロソフトやインテル、そしてEMCのような企業が生まれたのだ」と指摘。これまで押し寄せた波の中でも「クラウドの波はこれまでにないほどの破壊力を持つと同時に、チャンスをもたらす」とした。

 「ひとつの波を乗り切っても次の波には飲まれてしまうことがある。失敗した企業は、(自社のビジネスモデルを)破壊することを恐れていた。EMCは常に次の方向に進んでいきたいと考えている。ハードウエアの価値は今後さらに下がり、ソフトウエアの価値が上がるだろう。この流れの中で、EMCではソフトウエアの売り上げがハードウエアの売り上げをすでに上回っている」(トゥッチ氏)。