資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 新原浩朗氏
資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 新原浩朗氏
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 「いかに進みやすい枠組みを作り、企業によるイノベーションの促進を容易にするか。ここに注力する」――。資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長の新原浩朗氏は2012年10月29日、Smart City Week 2012(主催:日経BP社、特別協力:横浜市、開催:10月29~11月2日)でこのような意向を明らかにした。

 新原氏は、Smart City Week 2012の自治体セミナー「かながわ発!エネルギー革命」の「3.11を契機としたエネルギー政策の転換」と題した特別講演に登壇。同氏によると、欧米では原子力発電所の大きな事故の後に脱・原子力発電への政策転換が不可逆的に進んできた。東日本大震災に伴う福島の原子力発電所の事故によって、同様の政策転換は日本でも避けられない。資源エネルギー庁も、(1)エネルギー供給、(2)需要、(3)需給メカニズムの3つの点からエネルギー政策を転換しているとする。

 具体例として、先日決定された「革新的エネルギー・環境戦略」を挙げる。再生可能エネルギーを家庭や企業、発電網に大量に導入しやすくする方向性を打ち出した。北海道などで風力発電の導入を容易にするための送電網の強化や、太陽光や風力といった出力が不安定な電源の導入に対応するために大型蓄電池を導入しやすくする施策などを盛り込んだという。

 この7月に導入された太陽光発電による電力の固定買取制度(FIT)については、「2012年度だけで約200MWの拡大が見込まれる」とする。FIT以前の太陽光発電の導入量は500MWだった。こうした制度や戦略が噛み合うことで現在の20~30倍の太陽光発電所の導入も進むと予測する。

 一方で風力発電については、農地転用によって再生可能エネルギーの導入を拡大するだけでなく、その電力の販売によって農家の経営が安定するという両方の利点が見込める点を指摘した。

 新原氏はまた、現在実証中のスマートシティ/スマートコミュニティ関連のプロジェクトに触れながら、マンションにおける一括受電など、ICT(情報技術)の組み合わせで、スマートコミュニティを拡大できるとの予測を示した。一括受電マンションとは、電力供給を建物全体の契約に切り替え、棟内の戸別の電力の需給についてはマンション内の事業にすることで、電力買い取り量を引き下げる手法。実例としてNTTファシリティーズの実施例を紹介した。スマートメーターの導入に及び腰な電力会社への対抗策にもなるとして、「神奈川県とも連携し、取り組みを加速させていきたい」(新原氏)と強調する。

 最後に新原氏は、熱の有効活用について触れた。再生可能エネルギー熱の利用や未利用エネルギー熱の活用、蓄熱槽の活用などである。このうち、河川の水の熱を使った東京・箱崎地区の例として、ビルの地下に設けたプラントで冷水や温水を作り、周囲の地区に供給する仕組みを紹介。ここでは、約3割の省エネルギー化が実現できているとして、熱の有効活用を考えることの必要性を示した。