写真1●SAPジャパンが披露した「SAP Precision Retailing」のデモ。消費者は、自分にとって「お買い得」である商品を調べながら店内で買い物できる
写真1●SAPジャパンが披露した「SAP Precision Retailing」のデモ。消費者は、自分にとって「お買い得」である商品を調べながら店内で買い物できる
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写真2●SAPジャパンの馬場渉リアルタイムコンピューティング事業本部長
写真2●SAPジャパンの馬場渉リアルタイムコンピューティング事業本部長
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 SAPジャパンは2012年10月23日、小売業・サービス業の「リアルタイムマーケティング」を支援する新ツール「SAP Precision Retailing(SPR)」の提供を開始した。一般消費者向けの小売業やサービス業が、消費者の行動を基に精度の高い「ワン・トゥ・ワンマーケティング」を実現するためのツール群である。

 SPRを導入する企業は、一般消費者にスマートフォン/タブレット端末で動作する「買い物リスト」アプリを配信する。買い物リストアプリには、あらかじめ「今日は肉と野菜を買う」といったリストを登録してもらう。

 登録されたデータと、クラウド環境にあるSPRのデータベースを組み合わせることで、消費者に様々な働きかけができる。例えば、消費者がアプリで商品看板の写真を撮影すると、画像を自動認識して、この商品の店頭価格を表示できる。消費者別の購買履歴データベースに基づいて、「過去に有機栽培の野菜を頻繁に購入している消費者に、有機野菜の特別割引クーポンを配信する」といった販促も可能。GPSの位置情報などを組み合わせると、肉を購入しようとしている消費者が肉売り場に来たときに、その人が好みそうな「お買い得商品」をリアルタイムで表示するといったこともできる(写真1)。

 馬場渉リアルタイムコンピューティング事業本部長(写真2)は、「伝統的な新聞折り込みチラシに代わる効果的な販促手法がまだない。購買履歴を生かした販促だけなら従来からあるポイントカードシステムでも可能だが、リアルタイムでその場の状況に応じた販促ができるソリューションがこれまでになかった」と説明する。

 ERP(統合基幹業務)パッケージなど企業向けのビジネスシステムを主力としてきたSAPにとって、一般消費者に焦点を当てたツールの発売は異例だ。馬場本部長は「SAPは法人向けソフトの企業だと思われがちだが、今はB2B2C(企業を通じて一般消費者に接触する)ソリューションへと舵を切ろうとしている。SPRはSAPにとって象徴的な製品だ」と説明した。