写真●BT ロンドンオリンピック 2012 デリバリープログラム プログラムディレクターのハワード・ディッケル氏
写真●BT ロンドンオリンピック 2012 デリバリープログラム プログラムディレクターのハワード・ディッケル氏
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 BTジャパンは2012年10月18日、メディア向け説明会を開催。来日した英BT ロンドンオリンピック 2012 デリバリープログラムのプログラムディレクターであるハワード・ディッケル氏(写真)が、ロンドンオリンピックのICTインフラを総括した。BTは、ロンドンオリンピックの公式コミュニケーションサービスプロバイダーである。

 ロンドンオリンピックのICTインフラは大量のデータを扱うため、BTはできるだけクラウドコンピューティングでサービスを提供し、柔軟性を確保することを重視した。クラウドの使用例として挙げたのはIP電話。組織委の人数が「3月は1万人弱→7月は12万人→大会終了後2週間以内で2000人」と増減が激しいため、クラウドベースのテレフォニーソリューションを使用した。サービスを様々な場所で迅速に、開会式からきちんと提供する必要があることから「開催の2年前から多くのテストを繰り返してきた。コアネットワークは大会の約2年半前に提供した」(ディッケル氏)。

 ロンドン五輪のICTインフラのトレンドとして、ディッケル氏は(1)ソーシャルメディア、(2)セキュリティ、(3)サスティナビリティの3点を挙げた。ソーシャルメディアの利用は過去最高で幅広く、同氏によると今回の五輪に関連したTwitterのツイートは1億5000万に達した。スマートデバイスの普及などが変化を招き、ツイート数はロンドンオリンピックの開会式の日だけで前回(北京)のオリンピックとパラリンピックの数を上回ったという。

 こうしたトレンドへの取り組みとして、BTは米シスコシステムズと協力し、オリンピックパークに高密度の無線LAN環境を用意した。例としてスタジアムには300のAPを配置。距離でいえば1APで十分だが、幅広いカバーを目指さずカバー範囲を狭くしてAPの設置数を増やした。また無線LANをモニタリングし「一時的にAPの一つをスイッチオフ状態にする」などネットワークのキャパシティという点で柔軟に対応できるようにした。この無線LAN環境では、一人あたりの帯域は約25Mビット/秒、ネットワーク容量はトータル2Gビット/秒で実際は1.7Gビット/秒だったという。無線LAN環境は、携帯電話ネットワークのデータ通信をオフロードする用途でも使われた。

 セキュリティ面では、ネットワークとWebサイトのセキュリティを確保することがBTの役割だった。例えばWebサイトでは、セキュリティ関連のアラーム発生件数は23億件以上にのぼり、それらが本当の脅威か単なるアラームかを自動化したシステムでフィルタリングして分析。77のインシデントに絞り込んでいる。またディッケル氏は「BYOD普及の流れに伴い、1人の報道関係者が複数の端末を持参するようなケースもある。そのうちのどれがセキュリティの脅威となるか、あるいはそうではないかをネットワーク側で判断できることが重要」と話し、ネットワーク内のセキュリティの必要性も指摘。こうした脅威に、BTはクラウドベースのセキュリティソリューションを利用して取り組んだと説明した。

 サスティナビリティとは、「大会終了後に残ったものを、いかにして活用していくか」といったテーマである。BTでは「自社で研究開発したソフトウエアツールを用いて、様々な場所をつなぐネットワークデザインを解析。要件を15%減らすことができた」(ディッケル氏)。配線を1000kmくらい節約でき、そのぶん原材料と消費電力の節約になったとする。ICTインフラが環境にどのような影響をもたらしているかの分析なども実施した。

 最後にディッケル氏は、「BTがホスティングするLondon2012.comへの訪問者数は4億5000万に達した」といったデータを紹介して、オリンピックが成功するためにはインターネットが重要だという点に言及。今後のオリンピックでは(1)クラウドの有効活用、(2)ソーシャルメディアの利用増、(3)サイバーセキュリティの重要度の高まり、(4)インターネットを介したイベント配信の機会増――の4点が進むだろうと指摘した。