写真●3人のパネリスト。左から大屋誠氏、松本安英氏、金谷敏尊氏(撮影:新関雅士)
写真●3人のパネリスト。左から大屋誠氏、松本安英氏、金谷敏尊氏(撮影:新関雅士)
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 東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2012」において2012年10月12日、「実は大変!クラウドの運用を考える」と題するパネルディスカッションが行われた(写真)。クラウドならではの運用上の課題を見極めるとともに、解決策を探った。結果として、用途に応じたリソースの確保や、運用管理方法の標準化が重要である、という共通認識を得た。

 パネリストは3人。パブリッククラウドを運営するIDCフロンティアの大屋誠氏(ビジネス推進本部 サービス開発部 部長)、運用管理の標準化推進団体DMTFのボードメンバーの松本安英氏(富士通研究所 クラウドコンピューティング研究センター 主任研究員)、ITコンサルティングを手がけるアイ・ティ・アールの金谷敏尊氏(シニア・アナリスト)。そしてモデレータは日経BP社の星野友彦(コンピュータ・ネットワーク局 局長補佐)が務めた。

仮想サーバーの仕様や運用方法の標準化が問われる

 まず、IDCフロンティアの大屋氏が、「クラウドを契約するユーザーは、仮想サーバーのリソースの実態を判断しにくい」という問題点を挙げた。IaaSベンダー各社が公開しているメニューだけでは、仮想サーバーの性能、可用性、機能上の制約(仮想IPアドレスを割り振れるかなど)といった情報が分かりづらい、という問題である。

 アイ・ティ・アールの金谷氏も、これに同調。ハードウエアやソフトウエアスタックの種類を公開していないIaaSベンダーが多いとした。仕様表の読み方もIaaSベンダーによってまちまちであり、例えば「VCPU」という表現をどう解釈すべきかが異なるという。CPUの型番や動作周波数、コア割り当てなどの細かな表記がIaaSベンダーによって異なるという。

 こうした違いについてDMTFの松本氏は、「複数のサービスを比較検討できるようにするには、標準化が重要」と説く。まずは、仕様表の読み方(表現方法)についての標準化が大切であり、さらにベンダーによるロックインから逃れるために仮想サーバーの実現方法や運用方法の標準化が必要になるとした。

 実際にさまざまなユーザー企業やベンダーを見てきたアイ・ティ・アールの金谷氏は、「運用方法は、ベンダーごとにバラバラなのが実状」と指摘。監視方法、ハードウエアの保守方法、インシデントの解決方法などが異なるという。

リソースプールの管理が必要に

 物理サーバーと仮想サーバーの運用方法の違いについては、仮想サーバーの目的あるいは利点、すなわち「サーバー集約による余剰リソースの削減=利用率の向上」がポイントになる。物理サーバーの時代は利用率に余裕を持ってサイジング(容量設計)するのが当たり前だったが、仮想サーバーでは無駄をなくすことが重要になる。

 アイ・ティ・アールの金谷氏は、仮想サーバーならではの管理負荷として、「リソースプールの管理作業が新規に発生する」ことを挙げた。「サービスカタログ/メニューの標準化」が必要になるほか、可用性(SLA)の違いに応じて複数のリソースプールを用意しておき、これらをそれぞれのメニューから使い分ける、という運用方法にすべきだという。

 IDCフロンティアの大屋氏は、共有型で厳密なSLAがないパブリッククラウドを運用している立場から、ユーザーが知らないところで、ユーザーごとのリソース使用状況を分析し、空いているリソースを生かして、上手にリソースを割り振っている。ユーザーは最初からリソースに余裕を持って契約するわけではないので、結果としてリソースの利用率は高めになっているという。