写真●アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏(撮影:中村宏)
写真●アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏(撮影:中村宏)
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 「クラウドを日本企業の競争力を高めるツールとして使ってほしい」---アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏(写真)は2012年10月12日、ITpro EXPO 2012の特別講演でこう訴えた。

 長崎氏は「加速するエンタープライズ・クラウドの真実」と題して講演。クラウドサービスを利用してシステムの導入スピードを加速した事例や、コストを削減した事例を紹介した。

クラウドが注目される理由

 長崎氏はクラウドが注目されている理由として次の6つを挙げる。(1)初期投資が不要であること、(2)低額な変動価格、(3)実際の使用分のみの支払いで済むこと、(4)セルフサービス可能なインフラ、(5)スケールアップ・ダウンが容易であること、(6)新サービスや製品を即座に市場へ投入できること、である。「真のクラウドと呼ばれるためには、この6つの特性が必要であると考えている。オンプレミスの仮想化とは似て非なるものだ」(長崎氏)。

 Amazon Web Services(AWS)では、2006年のサービス開始以来、膨大なサーバー、ストレージの増強を続けてきた。現在、Pinterest、Dropboxをはじめ、190カ国以上の数十万社が利用している。「Amazon.comは我々の顧客の1社でしかない」(長崎氏)。

コスト、セキュリティ、移行性への懸念に回答

 クラウドに対する懸念には「コスト、セキュリティ、移行性」の3つがある。長崎氏はそれぞれの懸念に対し回答する形で同社のサービスを紹介した。

 「コストの見積もりが難しい」という懸念に対しては、「オンプレミスの場合、ピークの負荷に合わせてリソースを用意しなければならない。さもなければピークに対応できず、機会損失が発生する。AWSでは、負荷に合わせて使用量を増減でき、無駄と機会損失から開放される」(長崎氏)とする。また、AWSが空いていて安くなる時間に使用できる「スポットインスタンス」という利用形態もある。

 長崎氏はAWSにはAmazonの“小売りのDNA”があると語る。「従来のIT企業と、価格に対する考え方が決定的に違う。効率を高め、顧客に還元するのがAmazonの小売りのDNA」(長崎氏)。AWSは過去6年間で20回の値下げを行ったという。

 具体的な事例としては、Samsungが2年間で3400万ドル(27億円)を削減した事例、電通が大容量ファイル交換サービスをAWSで稼働させている例などを紹介。ガリバーインターナショナルはiPadアプリのインフラにAWSを採用。オンプレミスでは年間500万円のコストがかかるところを3割削減できたという。また花王はコーポレートサイトをAWSで運用、データセンターに比べコストを80%削減できたとする。

 インフラのセキュリティに関しては、第三者による認証を取得するなどセキュリティを徹底して追及していると語った。「データセンターの場所は公表せず、一見それと分からない施設。2回以上の2要素認証で守り、詳細なログを記録している」(長崎氏)。

 東芝メディカルが、患者のプライバシーにも関わる医療画像情報をAWS上で取り扱うなど、高いセキュリティが要求される用途でも利用されていると述べた。AWSを金融情報システムセンター(FISC)基準に適合させるためのガイダンスも紹介した。

 移行性については、AWSは既存の様々なOSや開発言語を選択可能であることを紹介。またソフトウエアの商用ライセンスの持ち込みも可能であると語った。

 例えばアンリツはSAPをバージョンアップする際にAWSを採用。ケンコーコムもSAPをAWS上に移行している。ユー・エム・シー・エレクトロニクスは中国、ベトナム工場でSAPを利用するにあたりAWSを採用した。

 「クラウドを活用することで、開発力の向上や、海外対応力の向上を実現した企業が数多く出てきている。日本企業の競争力を高めるツールとしてクラウドを使ってほしい」、長崎氏は来場者に向け訴えかけた。