「映像情報から、どこにゴミが飛んでくるのかを割り出し、そこにくずかごが自動的に移動する。これからのICT(Information and Communication Technology)は、こう使われていく」。富士通の執行役員常務 (兼)マーケティング部門副部門長である川妻庸男氏は、2012年10月10日~12日の日程で開催している「ITpro EXPO 2012」で「人と社会に貢献するICTのあり方」と題して講演。その冒頭で、YouTubeの動画をスクリーンに映しながらこう述べた。
川妻氏は「ICTの進化によって、機械がこれまでよりもずっと人に優しい存在になっていく」と語る。例えば、故障した機械にスマートフォンを近づけると、機械のエラーコードをスマートフォンが認識して対処方法を教えてくれたり、機械のプログラム修正を実施してくれたりするようになると予測。そして、こうしたことが可能になる背景には、ビッグデータをスムーズに処理できるようになったことがあるという。
富士通は、ビッグデータを活用するさまざまな取り組みを進めている。その一例として、糖尿病の発症を予測する社内実験について紹介した。社員3万人分の健康診断データを3年分用意し、糖尿病を発症した人と発症しなかった人の違いがどこにあるのかを数学的なアプローチでコンピュータに解析させている。糖尿病の判断材料としては一般に、血中ヘモグロビン濃度と空腹時血糖値の二つが使われる。健康診断データの場合は身長や体重、コレステロールの値など約50のパラメータがあり、それらを約2000次元で解析。それによって、約96%という高い予測制度を得られているとする。
ビッグデータの解析はそうした膨大な次元になることがあるので、人間の勘に頼って立てた仮説を検証するというアプローチは現実的でないという。そこで、「コンピュータによる分類、すなわち『データに語らせる』ことが重要になってくる」と川妻氏は主張する。もちろん、データの意味を考えるなど人手に頼る部分もある。そのため、データから相関関係や因果関係を発見したり、予測シミュレーションをしたりするキュレーターを社内にそろえているという。
「リアルワールドから発生するビッグデータをコンピュータに集め、それをキュレーターの力を借りて分析し、その結果をリアルワールドに反映する。これが富士通が標榜する『Human Centric Intelligent Society』という概念の展開例だ」と語り、講演を締めくくった。