写真●日経コンピュータの中田敦記者
写真●日経コンピュータの中田敦記者
[画像のクリックで拡大表示]

 「クラウドは日本とITエンジニアの雇用状況が異なる米国で生まれたもの。そもそも日本企業はクラウドのメリットを享受しにくいことを念頭に置いて、クラウドを選ぶ必要がある」。東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2012」の展示会、メインシアターで、日経コンピュータの中田敦記者がクラウド選びのコツを解説した。

 中田記者はまず、日米でITエンジニアの雇用状況がどのように異なるかを紹介した。「日本でユーザー企業にいるITエンジニアの割合は全体の25%程度。一方、米国では72%がユーザー企業に所属している」(中田記者)。クラウドを考えるうえで、「この違いを強く認識することが欠かせない」とした。

 中田記者は、「クラウドは米国で生まれ、米国のユーザー企業にとってメリットが大きいために普及した」と指摘した。米国では多くの場合、ユーザー企業が自らシステムを構築、運用する。そのため、「クラウドをはじめ、ツールによってIT分野での開発・運用の生産性が向上すると、企業全体の生産性向上にダイレクトにつながる」(中田記者)。セキュリティや可用性などのリスクについても、「生産性向上とのトレードオフだと考えることができる」(同)。

 しかし日本のユーザー企業の場合、「ユーザー企業ではなく、クラウドを扱うITベンダーの生産性が向上する」(中田記者)。ITベンダーの場合、ユーザー企業と人月で契約をしているケースが一般的なので、「収益の低下につながる生産性の向上は、多くのITベンダーが望んではいない」(同)。セキュリティや可用性といった面でのクラウドのリスクを負わなくてはいけないといったデメリットもある。

 こうした点を踏まえると「クラウドを選ぶ際、ユーザー企業の担当者が自らクラウドに触れ、価値を感じられるかどうかを判断することが最重要になる」(中田記者)。ユーザー企業の担当者がクラウドを使ってみるためには、「『セルフサービスでない』『クレジットカードだけで契約できない』といったクラウドよりも、簡単に試せるものが向いている」とした。