写真●「日経情報ストラテジーCIOオブ・ザ・イヤー2012受賞記念講演」で話すヤマトホールディングス 執行役員の小佐野豪績氏(写真:新関雅士)
写真●「日経情報ストラテジーCIOオブ・ザ・イヤー2012受賞記念講演」で話すヤマトホールディングス 執行役員の小佐野豪績氏(写真:新関雅士)
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 「ITと経営は、もともと親和性が高い」---。2012年10月12日まで開催しているICTの総合イベント「ITpro EXPO 2012」の2日目の基調講演で、日経情報ストラテジーの「CIOオブ・ザ・イヤー2012」に選出されたヤマトホールディングスの小佐野豪績執行役員(写真)は、難しいといわれる「経営とIT」の融合をテーマにこう強調した。ビジョンによって経営の大きな方向性を示す経営戦略とIT戦略は、経営を「上から支えるか、下から支えるかの違いだけだと思う」と強調した。

 「宅急便の成長とヤマト運輸のIT戦略」と題して講演した小佐野氏は、「宅急便は2005年以降、ITによる新サービス投入で付加価値を提供して成長してきた」と指摘。自らの経歴を踏まえ、どのような思いでCIO(最高情報責任者)を務めてきたか、さらには将来CIOを目指す20~30代の若手社員に向けたエールを語った。

 小佐野氏はまず経歴を披露し、「直接顧客に喜んでもらえる仕事がしたい」と大学理工学部で研究室の推薦を断り、1988年当時のヤマト運輸に「コンピュータでサービスレベルを上げたい」という志望動機で一般選考で入社試験を受けたと明かした。営業店舗などを経験した後、システム部門を経てリースを手掛ける関連会社の社長を経験した。

 ヤマト運輸は宅急便事業を開始する前の1974年に、運輸貨物の「運賃計算システム」を第1次NEKOトータルシステムとして稼働。小佐野氏は、この第1次システムが荷物の現在位置を把握できる現在の仕組みの元祖になったという。宅急便の生みの親である故小倉昌男元会長の著書「経営学」では、翌日に確実に届く「高品質」が成功の鍵だとして、情報システムによるサービスの可視化が既に指摘されている。こうした経営戦略のもと、どうすればドライバーが使いやすく社員も入力しやすいシステムにできるかという発想で、自らシステムを設計に取り組んできたという。

 1976年にスタートした宅急便事業は、2012年に14億個の配達実績を誇るまでに成長。これまでに一度も減収減益となった経験はなく、付加価値を提供する新サービスを次々と投入してきた。小佐野氏は、特に2005年以降に登場した新サービスは、ほとんどITによるものだと強調する。ITによる付加価値でインフラを整備したからこそ、宅急便の成長を押し上げることができたとの思いがある。また、「均一で良いサービス」を提供してきた結果として、商品購入者が受け取りの際に電子マネーで支払える「お届け時電子マネー払い」では、様々な電子マネーの相乗りも実現したという。