写真●グリーン・グリッドで日本技術委員会代表(インテル)を務める田口栄治氏
写真●グリーン・グリッドで日本技術委員会代表(インテル)を務める田口栄治氏
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 データセンターの省電化を推進する業界団体グリーン・グリッドは2012年10月11日、ITpro EXPO 2012で省電力への取り組みに関する最新動向について講演した。同団体が開催した表彰制度「データセンター・アワード2012」(2012年5月~9月に開催)を受賞した企業3社の事例を紹介。「人工知能の活用など、全体的にインテリジェント化の流れが起こっている」(代表の田口栄治氏、写真)という。

 データセンター・アワード2012では、国内のデータセンターにおける省電力へ向けた改善活動を応募によって集め、表彰した。評価基準は、電力などのデータを定量化/可視化していること、目標値を定めて実現に向けたロードマップを描いていること、活動を持続していること、取り組みが独創的(イノベーティブ)であること、などである。

 講演では、データセンター・アワード2012を受賞した3社の事例を紹介した。(1)最優秀賞のNTTコミュニケーションズ/NTTファシリティーズは、人工知能(AI)を使って空調を制御した。(2)優秀賞のSCSKは、革新的なイノベーションではないが、地道な努力を積み重ねた。(3)特別賞のインターネットイニシアティブは、外気冷却とコンテナ型データセンターを組み合わせた。

人工知能で温度を均一化、コールドアイルの温度を2度上昇

 最優秀賞のNTTコミュニケーションズ/NTTファシリティーズは、人工知能を使ってDCIM(空調自動制御システム)を構築した。データセンターに配置した複数の温度センサーなどの入力をもとに、複数の空調機ごとの出力を制御して消費電力を最適化するシステムである。

 人工知能によって、人間が手動で制御するよりも高度な電力制御が可能になるという。例えば、フロアーの一部の温度が高い時に、どの空調をどのくらいの出力で運転させればよいのかを、学習によって得られたモデルを適用して判断する。人間が温度分布図を眺めただけではわからない要素、例えば床下のケーブリングの影響なども学習するという。

 人工知能の効果は数値となって現れている。フロアーの温度分布が均一化し、目標温度(18度~24度)を逸脱した率は23%から1%へと大きく減った。サーバーラックの上部と下部の温度差も減った。こうした均質化によって過冷却を防ぎ、コールドアイルの平均温度を19.1度から21.0度へと約2度も上昇させることができた。PUE(Power Usage Effectiveness)は1.46から1.37へと減った。

顧客にブランクパネルを無償提供、地道な努力で改善を継続

 優秀賞のSCSKは、全国に分散した既存のデータセンター設備を地道な努力で改善した事例である。BMS(ビル管理システム)やEMS(ITシステムの運用監視システム)を駆使して可能な限り多くのデータを収集し、これら監視データをもとに地道なPDCAサイクルを回した好例であるという。

 例えば、顧客のシステムであるサーバーラック群に対してデータセンター事業者が勝手に触るわけにはいかないので、顧客にお願いして働きかけることでデータセンターのフロアー設計を理想的な状態にしていった。例えば、ラックがない場所に設置するブランクパネルなどを無償で顧客に提供するといった具合である。

外気冷却とコンテナDCで年間平均PUEを1.17に

 特別賞のインターネットイニシアティブは、外気冷却とコンテナ型データセンターを活用した「松江データセンターパーク」の事例である。2011年4月の運用開始に合わせて約1年間(2010年2月から2011年1月)実施した検証実験のデータなどを評価した。

 四季(春夏秋冬)に合わせて、三つのモードを切り替えて運用している。夏はエアコンを併用し、冬は外気が冷たすぎるため、IT機器の排気熱で温度を上げて使用。春と秋は外気をそのまま使用、といった具合である。これにより、実運転である2011年の年間平均PUEは1.17を達成した。2012年度(春)は、2011年の同時期よりもさらに電力を削減できている。