写真1●DELTAの岡田友輔代表(写真:新関雅士)
写真1●DELTAの岡田友輔代表(写真:新関雅士)
[画像のクリックで拡大表示]

 「野球の世界では『セイバーメトリクス』という考え方が広まりつつあり、既にビッグデータ分析がチーム編成や選手強化などに活用されている。野球分野の事例を紹介することが、ビッグデータに関わる方にとって何らかのヒントになればと思う」---。

 2012年10月10日、東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2012」(展示会は10日~12日)で、DELTAの岡田友輔代表(写真1関連記事)が『ビッグデータが加速させる野球の構造理解~セイバーメトリクスによる分析範囲の拡大』と題して講演した。岡田代表は、日米のプロ野球を中心としたスポーツデータ分析を専門に手掛けるが、ビジネス分野にも応用できそうなデータ分析の考え方を詳細に話した。

 セイバーメトリクスとは、アメリカ野球学会の略称であるSABR(Society for American Baseball Research)と測定基準(metrics)を組み合わせた造語である(関連記事)。

「選手を買うのではなく、勝利を買うべき」

 岡田代表は冒頭で、ブラッド・ピット主演で人気を博した映画『マネーボール』(2011年)を紹介した。主人公が経営危機に陥った米大リーグ球団を、セイバーメトリクスの手法を用いた改革で立て直すというストーリーだ。岡田代表は、映画の中の「選手を買うのではなく、勝利を買うべきだ」というセリフがセイバーメトリクスを象徴的に表していると説明した。

 そして、米国の野球研究家であるビル・ジェイムズ氏が30年ほど前にセイバーメトリクスについて体系化した理論を発表したのを発端に、各所で研究されるようになった経緯を解説。特に大リーグの球団経営には欠かせない存在になっているという。

 ジェイムズ氏は、チームの勝率と得点数・失点数には強い相関関係があることを立証した。チームが勝つのに必要なことは、得点を増やすか失点を減らすかの2つしかない。「野球に関わる人にとっては当たり前に思えるかもしれないが、データを基にしたシンプルな数式に落とし込んだ点が重要だ」と岡田代表は話した。

 球団経営、特にチーム編成に活用するうえでは、どの選手が得点と失点に関与しているのかを明らかにする必要がある。岡田代表は選手と得点・失点を関連づける手法を細かく説明した。

 例えば「外野フライが安打になってしまう」という事象は、投手は自分の責任でコントロールできず、統計的にも投手の力量と外野フライの安打率は相関がない。このため、投手の失点とはカウントせず、守備に関わった外野手の失点と見なすことになる。こうした“落とし込み”は、公式記録上の打点・得点や失策・自責点などのデータとは必ずしも一致しない。地道に事実を観察し、データを積み重ねることが、セイバーメトリクスの基になっているというわけだ。