写真●NEC クラウドシステム研究所 所長代理の岩田淳氏
写真●NEC クラウドシステム研究所 所長代理の岩田淳氏

 東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2012では、展示会場内の特設エリア「OpenFlow/SDNランド」においてOpenFlowやSDNに関する13種類のデモ展示を公開している(関連記事)。

 イベントの初日となる2012年10月10日には、会場併設のシアターで「Mr.OpenFlowに聞こう」と題したQ&Aセッションが開催された。登壇したのはNEC クラウドシステム研究所 所長代理の岩田淳氏(写真)。司会は日経コミュニケーション/日経NETWORKの加藤雅浩副編集長が担当した。OpenFlowやSDNは、話題が先行して実態がわかりにくいところがある。そこで会場からの質問に答える形で、OpenFlowやSDNの姿をクリアにしていこうというのがセッションの目的だ。

 会場で岩田氏は様々な質問に回答したが、ここでは最も基本的な3つを紹介しておこう。具体的には「OpenFlowのフローとは何か?」「OpenFlowの“オープン”さとは何を指すのか?」「SDNとOpenFlow、ネットワーク仮想化の関係は?」――の3つの質問である。

 まず「フローとは何か」というと、「レイヤー1からレイヤー4までの任意のヘッダー情報を組み合わせて、通信トラフィックを識別したり、特定したりするルールのこと」だという。従来のIPやイーサネットなどのプロトコルでは、特定のレイヤーのヘッダー情報を使って通信を制御する。そういう意味では、フローは複数のレイヤーを包含するものになる。

 「オープンさとは何か」という質問に関しては、「標準規格が定められていることと、OpenFlowに対応した様々なオープンソースソフトウエアの実装が進んでいること、2つの意味があると思います」(岩田氏)と述べた。OpenFlowはOpen Networking Foundation(ONF)という業界団体によって、ネットワークのユーザー企業主導で標準化が進められている。ソフトウエアスイッチ「Open vSwitch」や、「NOX」「Trema」といったコントローラーなど、OpenFlow対応の様々なソフトウエアがオープンソースとして開発されているという。

 「SDNとOpenFlow、ネットワーク仮想化との関係」については、ややわかりにくいポイントだ。岩田氏によると、「SDNとは何かという明確な定義はありません。ソフトウエアコンポーネントによってネットワークをダイナミックに制御するというコンセプトを総称してSDNと呼ぶことが多いようです」という。OpenFlowは、SDNを実現するために使うプロトコルの一つにあたる。つまり、SDNには「OpenFlowを採用したSDN」と、「OpenFlow以外の技術で実現したSDN」があるということだ。

 ネットワーク仮想化というのは、SDNとはまた違った概念である。サーバー仮想化、ストレージ仮想化と同じように、ネットワークのリソースを仮想化して柔軟に運用したいという管理者の要望を背景に登場したものだ。

 ネットワーク仮想化においては、複数の物理スイッチや物理ルーター、各種のセキュリティアプライアンスなどを、仮想的に一つのリソースプールとして扱う。その上で、ユーザーのニーズに応じて論理的なネットワークを構築したり、負荷に応じてリソース規模をスケールさせたりできるという。OpenFlowはネットワーク仮想化を実現する際に有効な技術として、様々な製品に採用されている。しかし、ネットワーク仮想化=OpenFlowではないので、OpenFlowの用途にはほかにも様々なものが考えられる。

 そのほか、会場では「OpenFlowは日本でだけ盛り上がっているように見えるが、世界での実態はどうなのか」「導入にあたってのデメリットは何か」といったやや辛口の質問も飛び出していた。このQ&Aセッションは、イベント最終日の10月12日13時にもう一度開催する。素朴な疑問から実装の難問まで、OpenFlowに関する質問がある方はぜひ足をお運びいただきたい。