写真●野村総合研究所(NRI)で執行役員IT基盤インテグレーション事業本部長を務める嵯峨野文彦氏(写真:新関雅士)
写真●野村総合研究所(NRI)で執行役員IT基盤インテグレーション事業本部長を務める嵯峨野文彦氏(写真:新関雅士)

 「技術系の人材も脱皮が必要だ。ITがビジネスの源泉となるためには、顧客が求めている価値を発見して実現していくサイクルが重要になる」---。野村総合研究所(NRI)の嵯峨野文彦氏(写真)は2012年10月10日、ビジネスイノベーションとITの関係をテーマにITpro EXPO 2012で講演し、求められるIT部門の姿を解説した。

 冒頭で嵯峨野氏は、IT部門とCIOの役割がビジネス寄りに変化していることを指摘。景気が悪くなるとIT投資に消極的になる、という過去の調査データを提示する一方で、こうした傾向を変える方法として「ITがあるからこそ儲かる、という状況を作らなければならない」と力説。CIOの「I」は、「インフォメーション」から「インフォメーション&イノベーション」に変わるとした。

技術ではなくビジネスのイノベーションを

 嵯峨野氏は、IT部門がビジネスのイノベーションを実現するためのポイントは二つあるという。一つは、ビジネスのイノベーションにとって技術のイノベーションは必ずしも必要ではない、という事実である。もう一つは、実用段階にあるかどうか、価格が安いかどうかなど、技術を採用するタイミングを見極めることである。

 ビジネスのイノベーションが技術のイノベーションとは独立している例として嵯峨野氏は、コマツが開発したインターネット車両管理システム「KOMTRAX」を挙げた。同システムは、車両が発信する車両情報(位置、稼動状況、コンディション)をもとに遠隔地から車両を管理するシステムである。

 KOMTRAXは当初、車両保守の時期を予測する用途で使われていたという。それが現在では、車両の稼働状況から現地の需要を予測して生産計画などに役立てるという使い方に用途を広げているという。こうした変革を「技術ではなくビジネスのイノベーション」と、嵯峨野氏は言い切る。