写真●NTTデータ代表取締役社長の岩本敏男氏(写真:新関雅士)
写真●NTTデータ代表取締役社長の岩本敏男氏(写真:新関雅士)
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 「IT技術の進化が止まることはない。壁にぶつかれば、人類はそれを乗り越えてきた」――。NTTデータ代表取締役社長の岩本敏男氏は2012年10月10日、東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2012で講演し、テクノロジーの未来予想を語った(写真)。

 講演テーマは「グローバル×テクノロジーで、勝利の方程式を解く~36カ国・地域、6万人によるNTTデータのグローバル戦略~」。コーディネータ役は、日経ビジネスの浅見直樹発行人が務めた。

四つの技術トレンドを展望

 本講演は、NTTデータが毎年発表する技術トレンド展望「NTT DATA Technology Foresights」を紹介し、今後期待されるテクノロジーが日本企業のグローバル経営にどう役立つかを展望するもの。岩本氏は具体的に、潜在的・顕在的な技術トレンドとして、大きく四つのキーワードを披露した。

 一つ目は「リアルタイム性が求められる」こと。岩本氏は「顧客のニーズはどんどんリアルタイム性に向かっている」と指摘。その上で、医療現場において患者にハンドセットを取り付け、脈拍などを計測して送信する具体例を紹介した。「異常があれば、すぐに医療チームが駆けつける事例で、実際にフィンランドでは実績がある」(同氏)。このほか東京ゲートブリッジに約50個のセンサーを埋め込み、橋の状態をリアルタイムで収集している事例も取り上げた。

 続いて紹介した技術キーワードは「競争力は知識やノウハウにシフトする」である。岩本氏は「企業の競争力はよい商品やサービスを作ること。しかし大事なのは、それを継続することだ」と強調した。さらに、よい商品やサービスを作り続けるために「有効なデータを市場からピックアップして分析する技術が必要になる」(同氏)と展望した。

 三つ目は「マス重視から個重視へ」。これは「個人情報や位置情報を活用し、より特定の顧客に対してリコメンドする技術」(岩本氏)である。同時に、プライバシー保護の技術も重要になるとした。

 四つ目は「誰でも活用できるITが普及する」こと。岩本氏は「これまでのコンピュータは、キーボードやマウスなどの操作が必要だったが、これからは違う」と述べる。具体的には「人間が本来持つ動作、例えばしゃべる、見るなどの動作と連動したインタフェースになる」(同氏)。具体例としては、医療現場における医師の動作と連動した画像操作、自動翻訳機能を備えた電話機などを挙げた。

価値を生む新規開発にIT予算を向ける

 四つの技術キーワードの紹介を終えた後、岩本氏は浅見発行人とテーブルにつき、これら技術をグローバル戦略の中でどう役立てるか議論した。

 その中で岩本氏が強調したのが、企業におけるIT予算の使い方。ガートナーの調査を引用し、IT予算の4分の3が維持管理に充てられ、新規開発には4分の1しか使われていない現実を指摘。「いかに維持管理のコストを減らし、価値を生む新規開発に向けるかが大きな課題だ」と語った。

 そして、これを実現するNTTデータのソリューションとして、開発方法論「TERASOLNA」を紹介。徹底した自動化によって、高速・高品質なシステム開発が可能になってきていると自社の強みをアピールした。

 岩本氏は最後に、浅見発行人から「技術の進化は永遠に続くと思うか」と質問され、「それを乗り越えてきたのが人類だ」と応じた。同時にNTTデータのグローバル戦略も推進し、早期にグローバルIT企業のトップ5(現在は6位)に入る目標も掲げた。