IPDCフォーラムは、ブラジルにおけるIPDCの展開に向けた取り組みを本格化させる。9月24日に行われた同フォーラムの勉強会でフォーラム活動の活動状況として、市場開拓担当幹事から報告された。

 ブラジルは、2006年に地上デジタル放送方式に日本のISDB-Tをベースにした方式を先行して採用した国であり、その後のISDB-Tの国際展開の先鞭をつけた形となった国である。またテレビ視聴世帯数が5000万近くあり、中南米で最大のテレビ大国でもある。同国でIPDCが適用されると、国内で検討されている機器やソフトウエアの国際展開も期待される。

 ブラジルが地上デジタル放送で採用しているのが、ISDB-TBと呼ばれる方式である。映像の符号化にはH.264が採用されており、国内仕様のMPEG-2より高い圧縮率で符号化できる。このため、ブラジルでは帯域が余っており、IPDCを用いた様々なサービスが展開できる。

 ブラジル側で、日本のIPDCに強い関心を抱いているのが、サンパウロ大学システムインテグレーション研究所のマルセロ・ズッフォ教授という。ズッフォ教授は、ブラジルにおけるデジタル放送方式の選定作業に従事し、ISDB-TB方式の設計を担当、さらには「伯日DTV推進会議を企画」「伯日デジタル放送推進シンポジウム実行委員長」などの取り組みを行い、InterBEE2011において来日講演も行っている。

 既に、2012年6月~7月に、リモートで意見交換を実施、マルチスクリーン型放送研究会の協力を得て、IPDCの応用事例の紹介を行った。また、8月にはIPDCフォーラムの関係者がサンパウロを訪問し会合も行った。こうした経緯からズッフォ教授は、IPDC活用による放送の高付加価値化の考え方に興味を持ち、「すぐにでもパイロットシステムを構築して実証実験を実施したい」「実質的なパイロット実験を先行させつつ、政府間レベルの協力につなげたい意向」という。

 そこで、ブラジルでのパイロット実験への協力や、受信機の共同開発、共同開発した受信機を用いた日本・ブラジル双方での商用化の進め方などの今後の進め方を固める。ズッフォ教授が11月のInterBEEに合わせて来日を予定しており、このときにこれらの点で合意を目指す方針である。

 また、InterBEE2012で予定するIPDCフォーラムシンポジウムで「海外におけるマルチスクリーン動向とIPDC展開の可能性(仮)」(こちら)の開催を予定しており、この中でもこうしたブラジルの動向が紹介される見通しである。