写真1●9月30日に開催されたキックオフイベント
写真1●9月30日に開催されたキックオフイベント
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 学生団体のapplimが企画するマーケティングコンテスト『第4回「試す」applim』が始動し、2012年9月30日にキックオフイベントが開催された(写真1)。今回のコンテストには、過去最高となる160チーム、合計650人の学生が参加。10月27日の決勝レセプションまでの約1カ月間にわたり、アイデアを競う。

 今回のコンテストのテーマは、「デジタル×リアルな体験」。スマートフォンを活用し、リアルな社会での行動を促すことでユーザーの消費行動を誘発するといったマーケティング活動を想定する。このテーマは、O2O(オンライン・トゥ・オフライン)などとも呼ばれ、このところホットな分野である。

なぜ今リアルな体験か

 このテーマが導かれた背景については、基調講演に登壇した「広告批評」元編集長の河尻亨一氏が端的に説明した。「なぜ今リアルな体験なのか」という問いに対する河尻氏の答えは、「情報の量が多すぎる」というもの。人間の処理を超えるほど大量のデータがあふれた結果、情報の価値がほぼなくなり、多くの人が実感のあるリアルな体験に価値を見出しているというのだ。

 例えば、「リアル脱出ゲーム」はネット上の脱出ゲームを「実際に体験できること」、AKB48はテレビやネットを通して見られるだけでなく「実際に会えること」、「街コン」はネットを介したやりとりではなくレストランなどで「実際に交流できること」---で人気を集めており、価値を高めているという分析である。河尻氏はこのトレンドを、「部活をやりたい」感覚に近いものだと表現する。「他人ごとではない、“自分ごと”にこそ、価値を見出せることが分かってきた」(河尻氏)。

 河尻氏は、コカコーラやグーグル、アメリカンエキスプレスなど海外の豊富な事例も紹介し、デジタル×リアルが「世界的なトレンドになっている」とした。

 今後のコンテスト活動のヒントとして河尻氏は、テレビCMの放映と同時にスマートフォンを「振る」ことで賞品を得られるというコカコーラのアプリを題材に、同アプリによるマーケティングが成功した要因として「“振る”という体験がブランドのメッセージとシンクロしていること」「ネット上でバズを生み出し、マスメディアとも連動することでムーブメントを狙ったこと」「既存のマーケティング施策にとらわれないチャレンジ精神があったこと」を挙げた。特に、3番目の要素が一番大事だという。

初音ミクのCMは象徴的

 河尻氏は、ボーカロイド「初音ミク」の検索が楽曲の制作、イラストの創作につながり、世界中のファンが投稿して共有、さらにはリアルなイベントにまで展開していくというグーグルのCMにも言及。誰もがクリエーターとなり参加し、新しいものを創り出していく時代を象徴しているものだとして講演の締めくくりとした。

 もう一つの基調講演の登壇者は、ブレークスルーパトナーズの赤羽雄二氏。ベンチャー支援経験が豊富な同氏は、「今後1カ月間の行動例」「ユーザーインタビューの仕方」「ホワイトボードを使ったアイデアのまとめ方」「チームのまとめ方」といったコンテストを進める上でのポイントのほか、コンテスト後の学生活動の指針も解説した。

 applim代表の藤本玄氏は、もともとの着眼は「身体性」だったが、分かりやすく伝えるために「リアルな体験」に落ち着いたという背景を紹介したほか、コンテストへの参加を通じて「最新の広告、デジタルマーケティング動向に詳しくなれる」「アイデア力、プランニング力への地力をつけられる」「チームワークを実践し、一つの目標を達成する実行力がつく」ことを期待したいとした。