写真●約180人の参加者を前に講演するスコラ・コンサルト プロセスデザイナー 柴田昌治氏
写真●約180人の参加者を前に講演するスコラ・コンサルト プロセスデザイナー 柴田昌治氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「いい会社の条件とは何か」。組織風土改革の第一人者として知られるスコラ・コンサルトの柴田昌治氏らによるセミナー(日経情報ストラテジー主催)が2012年9月26日に都内で開かれ、経営環境が厳しい中で、柴田氏は「社員と経営の一体感を作ることが経営改革のキーワード」と、自助努力で企業は伸びることを講演で指摘した(写真)。

 来場した約180人の参加者を前に柴田氏は、経営に無関心な社員が多いという悩みを抱える企業が増えている中、社内の意思疎通を改善させて成果を上げた企業の事例を紹介。社員らが自らの生い立ちなどを話す「ジブンガタリ」や、もやもやと普段感じていることを話す「モヤモヤガタリ」など、気軽にまじめな話ができる場として「オフサイトミーティング」を通じた風土改革が必要と指摘した。それによって社員が自ら仕事の意味や目的などを考え、行動原則や判断基準を共有することがチームのベースになると語った。

 特に柴田氏は、組織に「事実よりも上司の話すことの方が大事」という雰囲気があると、社員と経営の距離が生まれやすいと指摘。そうした状態に陥らないポイントとして、上司は部下に間違ったことを言われた場合でも、「なぜそう思うのか」と社員に問いかけ、その理由に共感したり、問題点を指摘するのではなく手がかりをつかむようにしたりするといった考え方の工夫を解説。社員が互いに協力して業績を上げられるように、まずマネジメントが変わる必要があると述べた。

 スコラの風土改革は、1年から1年半で行う。会場の参加者から「組織風土を変えるために、まず周辺の若手から時間をかけて雰囲気を作るのはどうか」と質問が寄せられると柴田氏は「時間はかかるものの、そうした手法もあり得る」とした。

私生活の話をきっかけに協力的な関係に

 続いて行われた事例講演では、ヤマトロジスティクス代表取締役社長でヤマトホールディングス執行役員でもある金森均氏と、ヤマト運輸 人事総務部長の大谷友樹氏が「ジブンガタリで経営チームを磨く」と題し、自社の経験を披露。同社はグループの執行役員10人を対象に2年間にわたって、毎月1回オフサイトミーティングなどを実施している。

 金森社長は、その効用として、「普段は静かな印象の役員が『妻との料理が楽しい』と私生活を語って、異なる側面がよく分かった」というエピソードを紹介した。それを機会に仕事や会議で、従来はしなかった話が出るようになったり、互いにベクトルが同じだと再認識して協力的になったりするなど、「短時間で話が通じるようになった」と成果を語った。

 また、段ボール製造機械の専門メーカーであるISOWAの磯輪英之社長は、工場に顧客を自ら案内しながら、社員の前でジブンガタリを実践していると披露。どんな思いで仕事をしているか周囲にストレートに伝えられるようになったほか、磯輪社長自らも「かくあるべき」と考えていたリーダー像が「自分に合ったリーダー像を見つける」という楽しみに変わり、社員による社長評価が好転した体験を明かした。

 最後に行われたパネルディスカッションでは、参加者から相次いで質問が寄せられた。ブログを執筆して自らの考えを披露している磯輪社長の体験や、海外事業の現地化を進める際にオフサイトミーティングを活用しているヤマトロジスティクスの金森社長が風土改革の経緯を明かし、参加者はやりとりを熱心に聞き入っていた。