図●顕微鏡で撮影したドット像からデータを再生しやすくする画像処理技術を開発
図●顕微鏡で撮影したドット像からデータを再生しやすくする画像処理技術を開発
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 日立製作所は2012年9月24日、石英ガラスの内部にCD並みの面記録密度でデータを記録、再生できる技術を開発したと発表した。

 石英ガラスは耐熱性、耐水性に優れる。データを記録した石英ガラスを1000度で2時間加熱してもドットがほとんど劣化しなかったことから、室温では数億年のデータ保存に耐えられるという。文化遺産や政府の公文書など、数百~数千年にわたるデータ保存が求められる用途に使えるとする。京都大学工学部と共同で研究した成果として、光ストレージの国際シンポジウム「International Symposium on Optical Memory (ISOM2012)」で発表する。

 今回データを記録したのは2cm角の石英ガラスで、記録密度は40メガバイト/(インチ)2。記録層は4層、ドットピッチは2.8μmである。高出力レーザーで100個のドットを同時に書き込む技術を開発、1.5kビット/秒の速度でデータを記録できるという。同社は2009年に石英ガラスにデータを記録する技術を開発したが、1ビットずつしか記録できないほか、記録密度が低い問題があった。画像処理で信号を読み取りやすくし、倍率20倍の一般的な透過型顕微鏡でもドットを判別できるようにした()。

 光ディスクや磁気ディスクといった一般的なストレージ媒体の寿命は数年~数十年ほどで、数千年にわたって保存することはできない。また、火事などで高温にさらされるとデータが消えることもある。例えばBD-REでは、レーザー光で金属膜を一瞬だけ数百度に熱することでドットを形成するため、同様の高温にさらせばデータは消失してしまう。

 今回の記録技術が熱に強い理由の一つは、データの記録に磁気や高温ではなく、光子と石英ガラスの特殊な相互作用を用いていることがある。高出力のフェムト秒レーザーによって、石英ガラス内部で「4光子吸収」という非線形光学現象を発生させ、石英ガラスの内部に微少な空洞(真空)を形成しているという。