千葉・幕張メッセで2012年9月21日に開催されたゲームビジネス関係者向けの「TGSフォーラム2012」では、「クラウドゲームが切り開く新しいゲームビジネス」と題したトークセッションが行われた。

左からセッションのモデレーターを務めた日経BP社「Tech-On!」の内田泰編集長、データホテル アライアンス戦略室 シニアマネージャー/室長の三輪芳久氏、ユビタス ビジネス・デベロップメント ディレクターの春日伸弥氏、IGDA(国際ゲーム開発者協会)日本代表の小野憲史氏
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 最初に講演したデータホテル アライアンス戦略室 シニアマネージャー/室長の三輪芳久氏は、クラウドゲーミングの利点について「ロースペックの機器でも常に最新ゲーム環境が整うこと」と語る。クラウドゲーミングは一言でいうと「超高速シンクライアント」技術で、映像のストリーミングサービスに近いため、映像をデコードできる機器であればシングルコアのスマートフォンやタブレット、ケーブルテレビのセットトップボックス(STB)などでもゲームをプレーできるという。

 遅延を少なくすることやサーバーコストなどが現在の課題ではあるものの、チート対策が不要なことや違法コピー対策になること、PC環境によってゲームが動作しないといったトラブルが少なくなるなどメーカー側にもメリットがあると三輪氏は語る。

 続いて講演したユビタス ビジネス・デベロップメント ディレクターの春日伸弥氏は、「クラウドゲーミングが出てきてもコンソールゲーム機はなくならない」と語る。

 ユビタスは世界各地で協業しながらビジネスを展開しており、春日氏は地域による特性の違いを挙げた。米国ではゲームタイトルの「売り切り」から「プレーチケット制」にシフトしつつあり、1時間や1日などレンタル感覚で遊べることがマーケットを拡大させているという。韓国の場合はスマートフォンやタブレット、スマートテレビ、STB、パソコンのWebブラウザーなどのマルチデバイスに配信する手法、中国では違法コピー対策として取り入れられていることなどを紹介した。日本ではアーケードゲームのタイトルをパソコン向けに配信したり、アーケードゲームに既存タイトルを配信するといった流れが出てきているという。

 さまざまなデバイスをコントロール機器として使えることや、画面を複数の端末に同時配信する機能などを利用すれば、制作側もさまざまな工夫ができると春日氏は語った。

 IGDA(国際ゲーム開発者協会)日本代表の小野憲史氏は、クラウドゲーミングが大きく成長すると見込まれる背景について、「半導体の進化」「ブロードバンドの進化」が止まらない」「ゲーム開発者の増加」が止まらないことを挙げた。新興国市場にはほとんど家庭用ゲーム機がないことから、家庭用ゲーム機の価値観やビジネスモデルが拡大し変化してきていると指摘する。

 大手メーカーのメジャータイトルの場合は、価格を自由に決められることをメリットの一つとして挙げる。インディーズタイトルについては、販売チャンネルが拡大することや、マルチデバイスで遊べることでカジュアルゲーマーにリーチできることを挙げた。

 小野氏は「iPhone用にちょろっと移植して失敗したという事例は多かった」と話し、クラウドゲーミングに適したゲームは「コミュニティーを前提にしたものが避けられない」と指摘した。