ビジネスデイ2日目の9月21日、国際会議場302会議室にてゲーミフィケーションセッション「ゲーミフィケーションが切り開くゲームの新しい可能性」が行われた。

 「ゲーミフィケーション」とはゲームデザインの手法をビジネスなど現実の問題解決に活かす取り組みのこと。米国ではオバマ政権が選挙活動や教育改革に活用する取り組みを進めるなど話題になっているが、日本ではまだ実用例が少ない。

 この分野に関して、東京大学 大学院 情報学環 特任助教の藤本徹氏と、博報堂エンゲージメントビジネスユニットテクノロジー推進部デジタルストラテジストの佐藤潤氏、グリー メディア事業補運部Japan第2スタジオ第2事業グループ第1チームの澤田典宏氏という立場の大きく異なる3名がそれぞれの立場からゲーミフィケーションの可能性について解説。モデレーターは日経トレンディの降旗淳平副編集長がつとめた。

大学、広告代理店、ゲームメーカーの立場からゲーミフィケーションの事例や可能性が語られた
大学、広告代理店、ゲームメーカーの立場からゲーミフィケーションの事例や可能性が語られた
[画像のクリックで拡大表示]

 最初に登壇した藤本氏は学問の立場から、社会におけるゲームの有用性が受け入れられつつある状況を紹介。そのうえで、社会的利用を目的としたゲームは内容や要素により、従来のゲームに社会的要素を取り入れた「シリアスゲーム」と、他のメディアにゲーム的要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」に分けられると解説。実際に存在した案件として、がん治療を子供に理解させるゲームや、SimCityのような大学経営スタッフ教育シミュレーションといった案件を紹介。参加者にこういった案件を取りにいけますか?と語りかけた。

 次に登壇した佐藤氏は、広告代理店の立場からさまざまなタッチポイントを持つインターネット広告の成長により、マス広告やダイレクトマーケティングを活かすための、顧客囲い込みが重要視されつつある状況を解説。ソーシャルゲームのノウハウを用いることで、キャンペーンの効果に継続性を持たせたり製品に付加価値をつけられるほか、スマートフォンの普及によりネットと実店舗を結びつけられると語った。広告代理店でも個々の案件でゲーミフィケーションを用いたキャンペーンを成功させているが、より体系的な知識や運用実績をもった企業との連携を重要視しているという。

 澤田氏はゲームメーカーの立場として、FoursquareやトヨタのecoDrive、オバマ大統領の選挙活動へのARG(代替現実ゲーム)といった活用例を紹介。そのうえで、従来のゲーミフィケーションはフリーミアムを前提に従来のビジネスモデルの上で提供されることが多く、制作費の捻出などコスト面での問題があるほか、売り上げへの貢献など定量的な効果測定にはウェブサービスが必須であるなどの問題点を指摘した。

左から東京大学の藤本徹氏、博報堂の佐藤潤氏、グリーの澤田典宏氏
左から東京大学の藤本徹氏、博報堂の佐藤潤氏、グリーの澤田典宏氏
[画像のクリックで拡大表示]

 トークセッションではゲーミフィケーションのデザインや効果測定など数字を追いかける部分で、異業種間のビジネスモデルや意識の違いを埋めるためのプロトコルが必要。現在は各プレーヤーとも手探りの状況だが、ソーシャルゲーム業界は従来のコンシューマーゲーム業界と比べ、比較的広告業界と話しやすいのではといった話題が交わされた。