「あなたの会社でもソーシャル革命を起こしてほしい」――。米サンフランシスコで開催されている、米Salesfoce.com主催のプライベートイベント「Dreamforce 2012」で2012年9月19日（現地時間）、同社会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が基調講演を行った。当初の予定を約1時間延長し3時間に及んだこの講演で、ベニオフ氏は冒頭のメッセージを繰り返し訴えた。
ベニオフ氏のいうソーシャル革命とは、ビジネスにソーシャルネットワークを組み込み変革すること。ソーシャルネットワークは、facebookをはじめとしてコンシューマー向けのサービスとして世界的に広まったが、この仕組みをビジネスに取り込み、業務あるいはビジネスそのものを変えていくべき、というわけだ。
ソーシャル革命が単なるアドバルーンでない証左として、ベニオフ氏は米ゼネラル・エレクトリック（GE）のジェフ・イメルト会長兼CEOとのエピソードを紹介した（写真1）。
昨年、ベニオフ氏はイメルト氏に請われてニューヨークに赴き、GEの将来像について意見を求められた。そのときベニオフ氏は、GEが製造する航空機エンジンのようなマシンを一つの人格と見なし、それを中心として、マシンの技術者、営業担当者、航空会社、飛行機の乗客がソーシャルネットワークを作るというイメージを提示した。このソーシャルネットワークで、マシンを含む参加者が情報を密にやり取りすることによって、新しい製品やカスタマーサービスなどを生み出していく。この将来像に、イメルト氏は大いに賛意を示したという（イメルト氏は9月20日＝現地時間＝にDreamforce 2012で登壇し、ベニオフ氏らと対談する）。
Coca-ColaやVirgin Americaなどもソーシャル革命に取り組む
このGEの例は、ソーシャル革命のコンセプトを表したものにすぎない。ベニオフ氏は具体例として、スキー・スノーボード用品メーカーの仏Rossignol、米Coca-Cola、ゲーム会社の米Activision、豪Commonwealth Bank、航空会社の米Virgin America、facebookなどの取り組みを紹介した。
このうち米Virgin Americaによる乗客サービスのソーシャル革命は、次のようなものだ。Virgin Americaのある航空機が飛行中に遅れて、定時に到着できない事態が発生した。するとVirgin Americaのスタッフは、顧客管理システムでファーストクラスの乗客の情報を一人ずつチェックし、同じ画面でその乗客が最近facebookに書き込んだ情報も確認する。このチェックをしたところ、乗客の一人がfacebookで、その日に極めて重要な用事があることを書き込んでいて、航空便の乗り継ぎを急がないと遅れてしまうことが分かった。そこでVirgin Americaのスタッフは、着地の空港にいるスタッフに、素早く乗り継ぎができる移動経路の地図を送り誘導を指示した。この指示を受けた空港スタッフは、機転を利かせ、誘導する旨を乗客の座席の前にあるモニターに表示させた。
ソーシャル革命ではこのように、社員だけにとどまらず、顧客やその人が使うfacebookのような一般向けSNSも包含するソーシャルネットワークを作り、それによって新しい顧客サービスや製品などを生み出すことができるという。
ソーシャル革命の実現を支援する八つの新サービスを発表
さらにSalesforce.comはこの日、ソーシャル革命の実現を支援するツールとして、SaaSとPaaSを合わせて主に八つの新サービスを発表した。
SaaSとしては、SNSをはじめとするネット上でのマーケティングを支援する「Maketing Cloud」、社員のモチベーション向上やパフォーマンス管理を行う「Salesforce Work.com」、企業と販売代理店やサプライヤーなどを結んで協業を行う「Chatter Communies for Partners」、顧客データをSNS上の情報と関連づけて活用する「Data.com Social Key」、ファイル共有の「Salesforce Chatterbox」。
PaaSでは、Javaアプリケーションの開発・実行環境「Heroku Enterprise for Java」、スマートフォンやタブレット端末向けアプリの開発環境「Salesforce Touch Platform」、既存システムも含めたシングルサインオンを実現する「Salesforce Identity」がある。
