図1●自治体のオープンな標準に基づく調達の状況(IPA「第5 回地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性の調査報告書」より)
図1●自治体のオープンな標準に基づく調達の状況(IPA「第5 回地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性の調査報告書」より)
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図2●自治体のOSS採用状況(IPA「第5 回地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性の調査報告書」より)
図2●自治体のOSS採用状況(IPA「第5 回地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性の調査報告書」より)
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 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2012年9月7日、「第5 回地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性の調査報告書」を公開した。同調査によれば、オープンな標準の採用に取り組む自治体が半数以上に達した。それらの地方自治体では、調達の公平化という効果が得られたと認識しているという。オープンソースソフトウエア(OSS)の導入は都道府県では100%に達した。

 調査は、IPAが継続して実施しているもので、今回が5回目となる。826自治体にアンケートを配布し、395自治体から回答を得た。調査に当たったIPA 国際標準推進センター非常勤研究員/マーケット分析WG 主査/災害対応プロジェクトチーム 岡田良太郎氏は、同日開催されたオープンソースと政府・自治体をテーマにしたイベント「オープンソースカンファレンス(OSC)government 2012 Tokyo/Fallの講演で調査を紹介した。

 オープンな標準に基づく調達状況については、「オープンな標準に基づく調達を行うことを調達ガイドラインなどで明確に定めている」、「オープンな調達に基づく調達を行うことを方針としている」、「オープンな標準に基く調達を可能な範囲で行っている」という回答の合計が53.3%と調査開始以来初めて過半数を超えた(図1)。またOSSの導入状況は「積極的にOSSを採用している」と「業務分類やシステム階層分類などに応じてOSSを採用している」の合計が都道府県では100%となり、5万人以下の自治体でも77.5%に達した(図2)。

 トップダウン型のリーダーシップに積極的な自治体では、業務の見直し効果が上がっている傾向が見られた。「CIOやCIO補佐官制度がない自治体であっても、情報システム部門が積極的に様々な業務の見直しに取り組むことで効果が得られている」(IPA 岡田氏)。

 一方、システム間データ連携について、システム開発会社によって定義や解釈が異なるため、複数のシステム間の連携が困難であること課題となっている。XMLでのデータの入出力が可能であっても、例えば「null」を「0」と同じと解釈し「税金免除」とするシステムと、「無効」と解釈するシステムが存在し、そのままではシステムを連携できない。この問題は、自治体が採用するシステムを構築するベンダーが解決していかなくてはいけない課題であると同調査は指摘している。

被災した自治体システム部門の奮闘を記録

 また今回の調査では、東日本大震災で被災した、あるいは支援にあたった地方自治体にヒアリングを実施した。

 津波により甚大な被害を受けた自治体として岩手県宮古市、宮城県気仙沼市、直接的な津波被害は受けていないが被災した自治体として岩手県遠野市、福島県白河市、茨城県ひたちなか市、千葉県千葉市、被災団体の支援を行っている自治体または団体として新潟県三条市、岩手県、宮城県、財団法人地方自治情報センターに聞き取り調査を行った。

 サーバー室が浸水し、サーバーを取り外して仮設事務所に運び業務を再開した自治体や、泥の中のサーバーから住民データをサルベージし復旧した自治体などといった、震災時の緊急対応の生々しい記録が記載されている。

 IPAの岡田氏は、「オープンソースカンファレンス(OSC)government 2012 Tokyo/Fall」の講演でこのヒアリング結果にも触れ、「システム部門がシステムに精通している自治体は、震災後速やかに復旧できた。業務システムのイニシアチブを自治体から外に出してはいけない」と指摘した。

 調査報告書はIPAのWebサイトからダウンロードできる。