写真●IT-CMFの開発に携わったインテル・ラボ ヨーロッパ 上席研究員のジム・ケネリー氏
写真●IT-CMFの開発に携わったインテル・ラボ ヨーロッパ 上席研究員のジム・ケネリー氏
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 アイルランドの非営利組織、イノベーション・バリュー・インスティチュート(IVI)は2012年9月7日、「IT-CMF」を日本で展開するべく、日本国内での本格的な体制作りを始めたと発表した。

 IT-CMFは「IT Capability Maturity Framework」の略で、「IT活用能力成熟度フレームワーク」などと訳す。「ITをビジネス価値に結びつける」という目的で開発されたフレームワークで、IT部門がIT戦略を立案・実行するための指針としての側面を持つ。IVIはこれまで主に、欧米を中心にIT-CMFの普及活動を進めてきた。

 もともとIT-CMFは米インテルのIT部門が、自社のITを改善するために作成したもの。インテルは2006年にアイルランド国立大学メイヌース校と共同でIVIを設立。IT-CMFの権利はIVIに移っており、現在インテルはメインスポンサーの立場でIVIを支援している。

 日本におけるIVIの活動を支援しているインテル日本法人によれば、IVIは2012年内にも日本における具体的な体制のあり方を策定し、2013年1月から3月にかけて日本市場向けの窓口を立ち上げたい意向だ。現時点でもアイルランドにあるIVIに直接問い合わせて、対応を依頼することは可能という。

 並行してIVIは日本の企業、大学、IT関連団体と協力関係を結び、日本市場における普及・推進の体制作りを進めている。NTTデータはすでにIVIのコンソーシアムに参加し、IT-CMFを使ったコンサルティングサービスを開始している。また、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が活動の一環としてIVIの活動をサポートする。

 学術組織の協力も得る。経営情報学会(JASMIN)が国内でのIT-CMFの普及促進に携わる。東京工業大学や東北大学もIVIの活動に協力する。東工大は2013年1月から教育にIT-CMFを組み込む計画。社会人向け教育プログラムの「Career Advancement Professional School」の中に設ける「ITValueコース」で、IT-CMFを含むようにするという。

 IT-CMFの開発に携わったインテル・ラボ ヨーロッパ 上席研究員のジム・ケネリー氏は、「産業界のリーダーや政府、公共機関、学術団体と連携して、IT-CMFの普及および改善を推進している。日本でも同じ考え方で進めていく」と語る(写真)。同氏はIVIのリサーチ・フェローも務めている。

 現在のIT-CMFの版は「V1.0」で、2010年に公表された。IT-CMFの最大の特徴は、企業におけるIT利活用の度合いを、「ITがビジネス価値を生み出しているかどうか」という観点から、5段階の成熟度として評価するところにある(IT-CMFの内容についての関連記事)。5段階の成熟度それぞれに、ケーススタディやベストプラクティスなどが整理されている。IT部門はこれらを参照することで、「自社のITおよびIT部門を改善し、ひいては企業にイノベーションをもたらすことができる」(ケネリー氏)。

 ケネリー氏によれば、IT-CMFはすでに約300人のCIOやITマネジャーからの評価を受けている。インテル社内でTCOの削減などの面で成果を出しているほか、英石油大手のBPが自社のITの改善に活用。またコンサルティング会社の米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が顧客企業向けのコンサルティング活動で採用しているという。BCGはインテルと同じくIVIのメインスポンサーにもなっている。