図●輻輳の原因(NTTドコモの発表資料から抜粋)
図●輻輳の原因(NTTドコモの発表資料から抜粋)
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 NTTドコモは2012年8月29日、8月13日~15日に約32時間にわたって国際ローミングサービス「WORLD WING」が利用しづらくなった問題(関連記事1関連記事2)の原因と対策を公表した。国際ローミングに使うNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の共通線信号網における輻輳が原因で、網内の通信設備に設定ミスなどがあった。

 輻輳の原因は二つ。一つは、NTTコムの共通線信号網におけるIP-STP(共通線信号中継装置)と呼ぶ装置の設定ミス。共通線信号網は主に、NTTドコモのIP共通線信号中継装置(SGW)と接続するIP-STPと、海外通信事業者と接続する国際交換機で構成し、それぞれの装置は東京と大阪にある()。両者をつなぐ経路は計8本。経路ごとに4本のリンクを設定できるが、設定ミスで2本だけの状態、つまり半分程度の帯域しか使えない状態になっていた。NTTコムが新しいIP-STPを導入した3月からこの設定になっていたが、トラフィックが多くなかったため、問題が顕在化しなかった。

 もう一つは、設計上の問題。IP-STPと国際交換機の間の経路は国別に設定しているが、トラフィックの多い北米と欧州向けが同一経路になっていた。問題が起こった13日は夏季休暇などで海外渡航者が増え、トラフィックが増加。前述の設定ミスで、まず北米・欧州向けの経路が輻輳状態に陥った。輻輳が発生すると別経路に迂回するが、すべての経路が2本のリンクしか使えない状態になっていたため、迂回先も次々と混雑して網全体の輻輳となった。

 リンクの設定ミスは8月14日時点で修正済み。8月16日に国別の経路設定も一部見直し、現在は特定の経路にトラフィックが偏らないようにしてある。トラフィックの変動を確認しながら9月上旬に再度、見直す予定だ。

 上記に加え、一部の海外通信事業者とは国際交換機を介さず、IP-STPに直接収容する方式に改める。「SIGTRAN」(IPネットワークで通信事業者の電話網の制御信号「No.7共通線信号方式」を転送するためのプロトコル群)を使い、9月下旬から順次実施する予定である。12月末をめどに新型の国際交換機を導入して網内の信号処理能力も強化する。

 さらにNTTドコモは中継事業者の冗長化も促進していく。現状はNTTコムの中継網が全体の9割を占めるが、一部を別の中継事業者に振り分ける。片方の中継事業者で障害が発生しても、1カ国当たり最低一つの海外通信事業者とは通信できるようにする考え。12月末から来年3月末にかけて実施する。

 このほか、NTTドコモとNTTコミュニケーションズの間の連携体制も強化する。8月から隔週で定期会合を開いており、トラフィック状況を確認や、故障対応のアクションプランの策定などを進めているという。顧客への情報提供の迅速化についても協力して取り組んでいく。