首都大学東京で2012年8月8日から開催された、夏期集中講義。90人ほどの学生一人ひとりに、タブレット端末を配布して授業を実施した
首都大学東京で2012年8月8日から開催された、夏期集中講義。90人ほどの学生一人ひとりに、タブレット端末を配布して授業を実施した
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画面上に直接書き込みをしているところ
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複数の書き込みを重ね合わせて表示できる
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首都大学東京 システムデザイン学部の西谷隆夫教授
首都大学東京 システムデザイン学部の西谷隆夫教授
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日本システムアプリケーションの小林正博社長
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日本システムアプリケーションの村木一至顧問
日本システムアプリケーションの村木一至顧問
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 首都大学東京で2012年8月、一人1台のタブレット端末を用いた集中講義が実施された。学生は、手元のタブレット端末で教材の内容を確認。適宜、ペンを使って、画面上にメモを取る。メモはクラウド上に保存され、自宅からでも確認できる。

 講義で用いられたシステムは、同大学システムデザイン学部の西谷隆夫教授と日本システムアプリケーションが共同研究しながら開発する「SmartBookEDU」。端末上で動作するアプリケーションと、クラウドサービスから成るものだ。クラウド上に保存した教材データを、ページ単位で各端末に配信。学生は端末上で教材を見ながら、さまざまな書き込みをする。書き込んだメモは、透明なシートとして別途クラウド上に保存される。学生は、必要に応じて各ページの上にメモを重ね合わせて表示できる仕組みだ。他の学生のメモ書きも、その学生が許可していれば、同じように重ね合わせられる。

 SmartBookEDUを開発する、日本システムアプリケーション顧問の村木一至氏は「メモが気が利いていると、その場所に簡単に戻って読み直せる。後で読み返したときに、自分の理解度も思い出される」と、メモ書き機能を重視した理由を語る。自分のメモだけでなく他人のメモも見られるようにすることで、書き込みを通じて学び合える可能性もある。単にメモ書きを集めると雑多になりがちだが、教材の「ページ」単位で保存されているため、自然と意味のあるまとまりになるという。自分が未習のページに他人が書き込みをしているのを見れば、「あいつはここまで進んだのか。自分も頑張ろう」との刺激にもなる。

 西谷氏が実講義での試用を開始したのは、2012年4月。SmartBookEDUをクラウドではなくサーバーで運用する「SmartBookP」を、少人数の講義で実験的に使い始めた。現在はまだメモ書き機能を十分に活用するところまでは至っていないが、既に効果も見えているという。例えば毎回の講義の終わりに実施した、理解度チェックのための穴埋め式クイズ。回答を即座に収集できるし、理解が足りない学生には直接メッセージを送れる。SmartBookEDUの起動時にメッセージが表示されるため、学生は必ず確認する。「大学でも学生にメールアドレスを配布しているが、そのメールは必ずしも読んでいない」(西谷氏)というが、SmartBookEDUを使うことで連絡がスムーズになった。

 学習する場所や端末を問わないメリットも大きいという。SmartBookEDUでは、Webブラウザー経由で教材データにアクセスする機能を用意しているため、スマートフォンなどからでも内容が見られる。「試験前日なのに何も勉強していない、という時も、電車の中でメールを読むような感覚で学習できる」(西谷氏)。「HTML5の技術を使い、ブラウザー経由でも書き込めるようにしている」(日本システムアプリケーションの小林正博社長)など、機能的にも充実している。

 今回の集中講義では、90人ほどが受講する大規模な授業で実証実験を実施した。こうした取り組みを積み重ねて、今後さらにサービスの改良や活用法の開発を進めていくという。SmartBookPについては、2012年下半期に商品化予定。価格は未定だが、「同種のシステムと比べれば格安」(村木氏)になる見込みという。