日本オラクルは2012年8月9日、水道や交通、電気などを扱う地方公営企業向けに新会計制度への対応支援を積極化すると発表した。同社のERP(統合基幹業務システム)パッケージが持つ「複数元帳」機能を利用し、税務・補助金申請のための予算・決算処理を中心とする従来の会計処理に加えて、新制度が求める会計処理や財務諸表の作成を可能にするのが狙いだ。

 地方公営企業は都道府県や市町村など地方自治体が経営する企業で、水道や交通、電気、ガス、病院を中心に全国で約9000社ある。今回の新会計制度は地方公営企業会計基準を見直すもので、地方公営企業法第2条で規定する約3000社を対象に、2014年度からの適用を予定している。

 地方公営企業会計基準を企業の会計基準に近づけることで、透明性の確保や比較可能性の向上を図るのが新会計制度の目的である。減損会計やリース会計など資産計上基準の導入のほか、借入資本金計上の廃止、セグメント情報の開示、キャッシュ・フロー計算書の作成などを求めている。

 日本オラクルは今回、「Oracle E-Business Suite」や「JD Edwards」、「PeopleSoft」などのERPパッケージを利用して、新会計制度への対応を支援する。中心となるのは、各製品が備える仕訳生成や複数元帳といった機能。IFRS(国際会計基準)への対応の際に利用するもので、日本基準の総勘定元帳とIFRSの総勘定元帳を一つのERPで実現できる。これらの機能を使って、税務・補助金申請のための従来の会計処理と、新制度に基づいた処理の双方を可能にする。

 ERPで予算編成から会計処理、仕訳生成、財務分析までの全てをカバーすることもできるが、「既存の会計システムの利用を継続し、新制度に基づく管理会計の機能を当社の製品で追加するという使い方が多いのではないか」(アプリケーション事業統括本部の桜本利幸統括ディレクター)。新制度に基づく財務・経営情報を分析・開示したい企業に対しては、同社のBI(ビジネスインテリジェンス)/EPM(エンタープライズ・パフォーマンス・マネジメント)製品も併用する。

 同社製ERPを導入した地方公営企業は「数社」(桜本統括ディレクター)。ただ、独立行政法人や大学法人などの公的機関や民間公益企業への導入実績があり、そこから得たノウハウを利用する。既存の会計システムと併用する場合はインタフェース部分を開発する必要があるが、「最短で単体テストまで4カ月という実績がある」(同)という。