写真1●NTTドコモの岩崎文夫代表取締役副社長
写真1●NTTドコモの岩崎文夫代表取締役副社長
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 NTTドコモは2012年8月7日、7月25日と8月2日に発生した通信障害に関する記者会見を開催した。

 会見の冒頭、同社の岩崎文夫代表取締役副社長(写真1)は、「昨年6月以降発生した一連の通信障害によって本年1月に総務省から行政指導を受け、再発防止策に務める中、今回の障害を起こしてしまった。ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げる」と頭を下げた。その上で両日に発生した通信障害について、その原因と対策について説明した。

spモード各種設定の障害は、更新時の誤ったファイル適用による運用ミス

 7月25日に発生した障害は、「spモード」の各種設定に関するトラブルである(関連記事)。同日の午前1時41分~午前9時14分の間、メールや無線LANなどの設定情報を変更できる各種設定の画面にアクセスできない、もしくは他のユーザーの設定情報が表示されるという事象が起きた。

写真2●7月25日に発生したspモード各種設定のトラブルの概要
写真2●7月25日に発生したspモード各種設定のトラブルの概要
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 障害は、spモード各種設定用サーバーのソフトウエア更改時の運用ミスが原因だった。spモードシステムは、現在、契約者数の増加に伴ってA面、B面という同じ機能を持つ二つのサーバー群によって運用(写真2)。約1200万のspモードユーザーを、このA面、B面のサーバーそれぞれ約600万ユーザーずつ収容している。端末に電源を入れたときのエリアによって、A面、B面のどちらに収容されるのかが決まるという。

 7月24日にまずA面のサーバーの更新を実施し、翌日の25日にB面のサーバーを更新した。ここでB面のサーバーを更新する際に、誤ってA面用の各種設定ファイルを適用してしまったという。これによってB面に収容されたユーザーYが各種設定を参照した場合、正しいB面の収容管理テーブルを参照するのではなく、A面の収容管理テーブルに収められたまったく別のユーザーXの各種設定を参照する事態となった。

 もっともこの状態でも、各種設定を変更するにはパスワードの入力が求められるため、ユーザーYはユーザーXのパスワードを入力しなければ実際には設定を変更できない。しかし「パスワードを、初期設定の“0000”のまま利用していたユーザーが6割近くいた」(岩崎副社長)ため、メールアドレスや無線LANの設定を変更されるユーザーが実際に発生することとなった。

 同社の調べによると、メールアドレスや無線LANなどの設定が変更された人数は約780人。迷惑メール設定などが変更された人数は約4600人になる。これらは変更されたユーザー(つまりA面に収容されたユーザー)であるため、設定を変更したユーザー(B面に収容されたユーザー)を含めると、影響を受けたユーザーはその2倍となり、全体で1万強となる。

 今回のケースは各種設定情報のミスであるため、他人のメールが送受信されるような事態にはつながらない。ただし「極めてレアだが(B面のシステムに収容される)Yさんが、自分自身のアドレスを変えたつもりで友人などにアドレス変更のお知らせをした場合、実際には(A面のシステムに収容される)Xさんのアドレスが変更されるわけだが、そのお知らせを受けたZさんがメールを送信する際にXさんに届くケースもあった」(岩崎副社長)。

 今回、誤ってB面にA面用のファイルを適用してしまった理由は、「A面、B面のそれぞれのファイルはファイル名称、サイズ、更新日時が一致しており、区別がつかなかったから」(岩崎副社長)。そもそもA面、B面のシステムは、「システムの再利用性を高めるために、まったく一緒のプログラムとなっている」(長谷川正之サービスプラットフォーム部長)という。

 再発防止策としては、同社は(1)ソフトウエア更改時の作業においてA面、B面のファイルを独立して管理、(2)ファイル確認の際には、ファイルの中身の違いも検出できる方法に変更、(3)ソフトウエア更新前後で追加・変更した機能の確認に加えて、A面、B面がそれぞれ独立して動作していることを確認するチェック項目を追加---を挙げた。