写真1●2013年3月期第1四半期の連結決算を説明する日本通信の三田聖二社長
写真1●2013年3月期第1四半期の連結決算を説明する日本通信の三田聖二社長
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写真2●競合MVNOの例
写真2●競合MVNOの例
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写真3●Turbo Chargeの優位点
写真3●Turbo Chargeの優位点
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 日本通信は2012年8月3日、2013年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算説明会を開き、今後はデータ通信だけでなく、音声市場を積極的に狙っていくとの方針を明らかにした。三田聖二社長(写真1)は「日本通信のサービスはデータ通信だけで音声通話ができないとの認識がある。これまではデータ通信が中心で音声通話はオプションだったが、音声を中心にデータ通信の契約も獲得する『電話MVNO』にポジショニングを変えていく」と強調した。

 方針転換の背景には、競合MVNOの台頭がある。4~6月のSIMカードの出荷数は4万8807枚と過去最高を記録したが、実際に増えた回線数(アクティブ数)は1万4729件。利用期間の終了や解約が増えているのが原因だ。「月1000円未満や月3000円未満という我々の2大プライスポイントに対抗したサービスが増えている(写真2)。解約者に理由を聞くと、他社MVNOへの移行が多い」(福田尚久副社長CFO)という。

 そこで容量課金タイプでは、2Gバイト分の通信利用権を2枚のSIMカードで使える「PairGB SIM」を6月に投入(関連記事)。低速タイプでは、100Mバイト当たり525円を支払うことで高速に通信できるオプション「Turbo Charge」を8月下旬に投入(関連記事)して対抗していく考えだ。Turbo Chargeは他社も同様のサービスを提供するが、「高速に切り替えると使い切らないといけない。当社の場合は必要な時にスイッチのオン/オフで高速と低速を自由に切り替えられるので効率的に利用できる」(福田副社長CFO)とした(写真3)。

 もう一つの優位性が音声通話サービス。音声通話がメインでデータ通信をオプションで追加できる「スマホ電話SIM」を8月1日から販売した(関連記事)。同社はこれまでも音声通話が利用できる「talkingSIM」を提供していたが、ラインアップは限られていた。「音声は他社MVNOが提供していないサービス。これまでは、まずSIM市場の創出が優先で他社MVNOの参入をお招きする立場だった。だが競合が増えてきた今後は、市場開拓から本格的な攻めに転じる」(福田副社長CFO)構えだ。

 8月2日に発表済みの連結決算は売上高が前年同期比3.2%減の9億2300万円、営業利益が同9.4%増の7300万円。法人向け事業を丸紅との合弁会社に切り替えたほか、販売代理店の契約解消による流通合理化が収益や利益を一時的に圧迫した。