写真●講演する日産自動車の能丸実グローバル情報システム本部IS企画統括部部長(写真:井上裕康)
写真●講演する日産自動車の能丸実グローバル情報システム本部IS企画統括部部長(写真:井上裕康)
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 「クラウドを大前提に、色々なソリューションを考えている」。2012年8月1日、都内で開催中の「日経BP Cloud Days Tokyo 2012 SUMMER CONFERENCE(CDT2012夏)」で、日産自動車の能丸実グローバル情報システム本部IS企画統括部部長はこう語った(写真)。

 能丸部長は「日産自動車のIS/IT戦略『VITESSE』の取組み」というテーマで講演。まず、VITESSEの前の中期IT戦略である「BEST」(2006年3月期~2011年3月期)の成果について触れた。

 能丸部長によればBESTの狙いは四つあったという。具体的には「ガバナンス、TCO(総所有コスト)による可視化、ビジネス連携強化」「グローバル規模でのシステムの標準化・最適化」「選択的・戦略的なソーシング」「テクノロジーフラットフォームの標準化・共通化」だ。

 これら四つの狙いを明確にしたうえで、能丸部長はそれぞれでどんな施策を手掛けたのかを紹介。その一つが、グローバル規模でのシステムの標準化・最適化におけるアプリケーションの棚卸しだ。それは「ビジネスにとっての重要性」「コスト」「テクニカル・クオリティ」「ファンクショナル・クオリティ」の4軸でアプリケーションを評価し、維持や凍結などに分類するというもの。これにより、1700近くあったアプリケーションを5年で1200超にまで減らせたという。

KPIでゴールを設定

 こうしたBESTの成果を踏まえて策定したのが、2012年3月期から2017年3月期までのIT戦略であるVITESSEだ。

 VITESSEでは、ゴールを明確にするためにKPI(重要業績評価指標)を設定。例えば、役員のITへの満足度を示す「Executive Satisfaction Ratio」を2014年3月期に86%(2012年3月期は79%)に高めるといったKPIを置いている。

 そこで鍵を握るのが「Speed of Development(開発スピード)」(能丸部長)だという。その開発スピードを上げるために欠かせないのがクラウドコンピューティングと能丸部長は指摘。ソリューションを構築するうえで「クラウドは大前提になる」と能丸部長は語った。

 クラウド活用の日産における代表例が、米マイクロソフトと共同で開発する「次世代ディーラーマネジメントシステム(DMS)」だ(関連記事)。DMSでは、地域や組織などに依存しないコア機能を定めたうえで「日産のスペシフィックを上乗せしていく」(能丸部長)方針という。

 講演の最後に能丸部長は「クラウドファースト時代」を迎えつつあるなかでのユーザー企業の姿勢に言及した。能丸部長は「ユーザー企業は『何を』をきちんと伝えなければならない」と強調。そのために日産では「GLOBAL IS Annual Report」を毎年発行していることを紹介した。