写真1●ヴイエムウェア シニアプロダクトマーケティングマネージャの桂島航氏(写真:井上裕康)
写真1●ヴイエムウェア シニアプロダクトマーケティングマネージャの桂島航氏(写真:井上裕康)
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 「現代の企業システムは多様化が進んでいるので、それらを単一のクラウドでまかなうのは不可能だ。全社的な基盤を構築する際は、各ユーザー企業に合う形のクラウドを作れることが重要になっている」---。

 ヴイエムウェア シニアプロダクトマーケティングマネージャの桂島航氏(写真1)は2012年7月31日、「日経BP Cloud Days Tokyo 2012 SUMMER CONFERENCE(CDT2012夏)」の講演「VMware が描く仮想化からクラウドへのロードマップ」において、各ユーザー企業に最適な形のクラウドを提供できることがヴイエムウェアの強みであると主張した。

 講演では、仮想化への取り組みを本格化させて全社的な仮想化基盤やプライベートクラウドへと進化させることで得られるメリットや、その道筋などについて説明した。

 全社的な仮想化基盤やプライベートクラウドを構築するメリットを二つ挙げた。

 一つは、CPUやメモリーといったサーバーのリソースを大きなリソースプールにまとめて、効率的にアプリケーションに割り当てられること。「ビジネス部門からの要求に俊敏に対応して、求められるスペックの仮想マシンを作ったり、リソース増強を図ったりできる」(桂島氏)。

 もう一つは、IT部門の主導で運用の全体最適を図れる点。従来のように部門単位でシステムを構築すると、各システム間でハードウエアのライフサイクル、OSやミドルソフトなどのテンプレート(インストールイメージ)、アプリケーションがそれぞれバラバラになるので、運用コストがかかさんでしまう。全社的な仮想基盤やクラウド基盤を整備することにより、そのほとんどが共通化されるので運用コストを大きく下げられると述べた。

リソースプールを有効に使う仕掛けなどが必要

 続いて、構築の道筋を示した。「既に全社的な仮想基盤やクラウド基盤を作り上げているユーザー企業は、最初は部分的に仮想化するところから始めて、仮想化の魅力に触れながら理解を徐々に深めていった。その後、適用範囲を広げて全社的な仮想化基盤へと発展させ、その上で自動化を進めてプライベートクラウドにつなげた。こうしたやり方がベストプラクティスになっている」と説明。また、その先にパブリッククラウドを機動的に使う「ハイブリッドクラウド」があると指摘した。

 部分的な仮想化を全社的な統合基盤に広げ、パブリッククラウドに進化させる際には次の三つの機能が不可欠になるという。

 一つは、リソースプールをより有効に利用する仕掛け。単にCPUやメモリーのリソースプールを作るだけでは不十分で、物理サーバーをまたいで負荷を平準化する「DRS(Distributed Resource Scheduler )」機能が必要という。この機能が無いと、負荷平準化の対象範囲が物理サーバーにとどまるので、管理者が各仮想マシンに比較的大きな性能マージンを確保しがちとなり、統合率が上がりにくいと説明する。DRS機能を利用することで、統合率が40~60%高まることが多いという。

 二つ目は、統合監視やDR(Disaster Recovery)の支援機能である。大規模な仮想化環境では、監視における可視性の確保が特に重要という。「従来の運用をそのまま適用すると、トラブルシューティングに時間がかかって、ユーザーの要望に応えられなくなる」(桂島氏)。そこで、基盤全体の健全性を瞬時に把握でき、もし異常が生じている場合は何が原因なのかをドリルダウンによって追究できる「vCenter Operations Manager」の利用がポイントになるという。

 また、DRではストレージのレプリケーションを止めて、サーバーのOSやミドルソフト、アプリケーションをインストールし、それらを設定するといった一連の作業が必要になる。必然的に手順書が厚くなり、作業時間も長くかかってしまう。仮想化環境であれば、「vCenter Site Recovery Manager」の利用によって、一連のDR手順をあらかじめ組み立てておき、いざ必要になった場合にはボタンを一つ押すだけで迅速に自動実行可能という。

 三つ目は、一般に「ソフトウエアリファインド」などと呼ばれるセルフサービス機能だ。「vCloud Director」を導入することによって、VLANなどネットワークの設定、ストレージのボリューム割り当て、ファイアウォールのセキュリティ設定などを利用者自身がWebブラウザーを介して実施できるようになる。

 最後に、2012年7月に買収した米DynamicOpsのマルチクラウド対応のクラウド管理技術によって、「今後はVMwareベースのクラウドに加え、AzureやAmazon Web Servicesなどのクラウドも一元管理できるようになる予定だ」と述べ、講演を締めくくった。