写真●日本ヒューレット・パッカードの山口浩直執行役員ストラテジック・テクノロジー・オフィサー(写真:井上裕康)
写真●日本ヒューレット・パッカードの山口浩直執行役員ストラテジック・テクノロジー・オフィサー(写真:井上裕康)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本ヒューレット・パッカード(HP)の山口浩直執行役員ストラテジック・テクノロジー・オフィサーは2012年7月31日、日経BP社主催のセミナー「日経BP Cloud Days Tokyo 2012 SUMMER CONFERENCE(CDT2012夏)」で講演した。

 講演タイトルは「進化するHPのクラウド・イノベーション戦略」。HPが推進する「HP Converged Cloud」について解説しながら、クラウドコンピューティング活用のポイントを語った。

 山口執行役員はまず、「クラウド“ブーム”から時間が過ぎ、本格的な普及に向けて様々な課題が見えてきた」と指摘した。具体的には「仮想化疲れ」「野良クラウド」「クラウド“パケ死”」といったユニークな表現で課題を例示した。

 仮想化疲れとは、物理サーバーとは挙動や運用方法が大きく異なり、安定稼働への不安が多い仮想化技術の導入拡大で、情報システム部門に“疲れ”が出ていることを指す。

 2つめの野良クラウドは、社内で各部門が勝手にクラウドサービスを導入してしまうために、情報システム部門が把握していないクラウドが広まること。山口執行役員によると、社内のIT支出全体のうち35%程度が情報システム部門の予算枠外で、各部門が勝手に使っている例もあるという。短期的には野良クラウドによって各部門の業務が効率化されるが、中長期的には、各部門で部分最適化された情報システムを統合するために大きな負担を強いられる。

 最後のクラウド“パケ死”は、従量制のパブリッククラウドサービスを使っている場合に起きがちな現象だ。サービスを使い込むうちに料金が増大し、予算オーバーになったり、サーバーを保有したほうが安価に済んだりする。これを、携帯インターネットの使い過ぎで従量制パケット料金の高額請求に追われる“パケ死”になぞらえて説明した。

「3つのクラウド」を組み合わせよ

 山口執行役員は、これらの課題を解決するためにクラウドの統合、すなわち「Converged Cloud」の重要性を強調した。HPはもともと、物理的な資産や管理・運用などをユーザー企業が占有する「プライベートクラウド」に関するソリューションに注力してきた。だが「お客様のビジネス稼働は多様で、3つのクラウドを適材適所で選択する時代になっている」と山口執行役員は説明する。

 3つのクラウドとは、プライベートクラウドに、「マネージドクラウド」(管理主体は外部だが、コンピュータ資源をある程度専有できる)と「パブリッククラウド」(管理主体は外部で、コンピュータ資源は不特定多数の企業・個人と共有する)の2つを加えたものだ。HPはこれらすべてについてノウハウを持っており、他社のクラウドサービスも組み合わせて中立的な提案ができる立場にあるという。

 HPは「Amazon Web Services」など、他社のパブリッククラウドサービスを組み合わせた提案をしているが、一方で、HPが独自に2012年5月から提供を始めた「HP Cloud Sevices」を紹介することも忘れなかった。HP Cloud Sevicesの最小構成料金は1時間当たり4セント(約3円)で、クレジット決済にも対応。「オープンクラウド規格のOpenStackを採用しており、十分競争力のある価格で提供している」とアピールした。