写真1●ニッセンでマーケティング本部CRM推進部ソーシャルメディアチームを率いる柿丸 繁氏
写真1●ニッセンでマーケティング本部CRM推進部ソーシャルメディアチームを率いる柿丸 繁氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2012年7月24日から開催されているイベント「モバイル&ソーシャルWEEK 2012」において、ニッセンでマーケティング本部CRM推進部ソーシャルメディアチームを率いる柿丸 繁氏は「ニッセンのビッグデータ活用事例 ~VOC活用による次世代型CRM~ 」と題し、ビッグデータの観点からソーシャルメディア活用について自社の取り組みを説明した(写真1)。

 ニッセンでは、従来の事業基盤であるカタログ通販を推し進めるかたちでEコマースの売上を拡大しているという。具体的には、セグメント化した顧客に対し、One to Oneマーケティングに基づいたカタログを配布したり、コンテンツ配信を実施したりすることで、売上を拡大。ここでは顧客DBをいかに充実させていくかが事業基盤の一つになるという。

3つの取り組みでソーシャルメディア活用を促進

 この事業基盤に基づき、3つの取り組みを通じてソーシャルメディア活用を促進しようとしているという。(1)ビッグデータの活用基盤構築と活用推進、(2)ソーシャルCRMを活用した関係構築、(3)広告宣伝分野でのクロスメディア活用、である。今回は(1)と(2)について、構想段階のものを含め、自社の取り組みを披露した。

 (1)のビッグデータの活用基盤構築と活用推進においては、既存DBのリッチ化とプロモーション活用、VOC(顧客の声)活用基盤構築と活用推進に取り組んでいるという。具体的にはソーシャルメディアからソーシャルグラフデータを獲得して顧客DBと連携することにより、販売促進につなげるという取り組みを検討している。生活イベントをタイムリーに捉えることにより、従来見落としている販促機会を得ることを期待している。ここでは、不必要なデータは獲得しないなどのリスクマネジメントを重視しながら、その活用方法を検討しているという。

 また、自社SNS「ハピテラ」に日々蓄積される商品クチコミや、Webクローリングによるソーシャルデータに含まる自社商品/サービスに対する声などを統合し、テキストマイニングによってアウトプットとなる気づきや改善点などを得ることを検討しているという。

 (2)のソーシャルCRMを活用した関係構築では、コミュニケーション戦略の展開と、消費者主導型の商品開発ラボの設立に取り組んでいる。

 コミュニケーション戦略では、SNSを活用した顧客との対話戦略を徹底すると同時に、アクティブサポートの拡大に取り組んでいるという。その結果、例えばTwitterではフォロワー数は競合他社よりも少ないものの、日々の対話量の多さからエンゲージ(ユーザーとのかかわり)が生まれているとする。

 同時に、対話戦略の一環としてアクティブサポートを2012年4月から実施、積極的な顧客対応に取り組んでいる。これにより、顧客の離反防止につなげると同時に、商品改善に生かすことが見込めるという。

 柿丸氏はさらに、ソーシャルメディアを活用することで消費者主導型の商品開発が簡単に実現できるようになったことに触れた。潜在需要のキャッチと受注効率の改善が期待できるという。

ソーシャルメディアは顧客が主役

 これらの取り組みを示しながら柿丸氏は、「ソーシャルメディアはお客様が主役であり、企業がセールス色を出すものでない」ことを指摘。同時に、「ソーシャルメディア活用は、良いことづくめではない。ソーシャルCRMへのきちんとした準備は必要」と語り、リスクマネジメントが大事であることを強調した。例えばニッセンでは、「ニッセンソーシャルメディアガイドライン」を業務担当者向けや一般従業員向けに用意しているという。

 最後に柿丸氏は、「あらゆる社内部門が連携してソーシャルメディアを使いこなす時代なので、それにフィットした組織や、組織間連携を強く意識することが必要」と述べ、ソーシャルメディアの担当部署だけでなく、社内全体を巻き込んで取り組んでいくことの重要性を強調して講演を終えた。

 日経BP社は7月24日~26日の3日間、モバイル&ソーシャルWEEK 2012(会場:六本木アカデミーヒルズ49)を開催している。