写真1●富士通の山中明執行役員常務ソフトウェアインテグレーション部門長(右)と、阪井洋之ソーシャルクラウド事業開発室長
写真1●富士通の山中明執行役員常務ソフトウェアインテグレーション部門長(右)と、阪井洋之ソーシャルクラウド事業開発室長
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写真2●農業生産管理SaaSのアプリケーション「生産マネジメント」のスマートフォン用画面例。現場作業者はスマートフォンから作物の成育状況を記録できる
写真2●農業生産管理SaaSのアプリケーション「生産マネジメント」のスマートフォン用画面例。現場作業者はスマートフォンから作物の成育状況を記録できる
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写真3●農業生産管理SaaSのアプリケーション「生産マネジメント」の画面例。農業の管理者は、PCの画面から農場の経営管理に必要な情報を確認できる
写真3●農業生産管理SaaSのアプリケーション「生産マネジメント」の画面例。農業の管理者は、PCの画面から農場の経営管理に必要な情報を確認できる
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 富士通は2012年7月18日、農業経営を支援するためのクラウドサービス「Akisai(アキサイ)」を提供すると発表した。開始は10月から。

 Akisaiでは、農作物の栽培や施設園芸、畜産業務における生産活動や経営を支援するためのアプリケーション群を用意する。開始月である10月はアプリケーションシリーズの第一弾として「農業生産管理SaaS」を提供する。「農作物の生産状況やコスト構造の『見える化』ができるようになるため、農業経営の効率化が見込める」(山中明執行役員常務ソフトウェアインテグレーション部門長)という(写真1)。

 農業生産管理SaaSは大きく二つのアプリケーションで構成する。「生産マネジメント」と「集約マネジメント」だ。生産マネジメントは主に生産農家(生産者)向け。現場作業者向けの機能と管理者向けの機能を備える。現場作業者がスマートフォンなどの携帯デバイスを使って作物の成育状況や作業内容を記録する(写真2)。SaaSではこれらの情報を集約。管理者はPCの画面から、農場全体における作物の概況や作業コストの構造など、経営管理に必要な情報を把握できる(写真3)。

 集約マネジメントは、主に農協などの出荷団体や卸売業者など仕入れ側での利用を想定したもの。仕入れ先となる生産者が使う生産マネジメントと連携して動作する。「生産者が入力した農作物の収穫量データを見ながら小売業者への出荷計画を立案したり、逆に小売業者からの需要状況を踏まえて農作物の納入先を増やしたり、といった柔軟な調達業務が実現できる」(山崎富弘ソーシャルクラウド事業開発室サービス開発統括部 食・農業ビジネス担当シニアマネージャー)という。

 富士通は農業生産管理SaaSのユーザーに向けて「イノベーション支援サービス」も別途提供する。農業生産管理SaaSを使った現場の業務改革と経営管理をサポートする。

「ICTの活用が収益拡大につながる」

 富士通は2008年から複数の農業法人と組んで、ICTを使った農場経営の実証実験を重ねてきた。「実証実験を通して、作物ごとの利益率が見える化できたり、品質や生産性を定量分析することで経営改善の糸口が見つけられたり、作業のマニュアル化が人材育成に貢献したりと、ICTの活用が収益拡大につながる、ということが分かってきた」(山中氏)。

 今回発表した農業生産管理SaaSとイノベーション支援サービスは、こうした実証実験の成果を踏まえて商用サービスとして提供するもの。「農業はまだまだICTによる業務改革が進んでおらず、生産性アップや品質向上の余地が非常に大きい分野。SaaSと支援サービスを併せて、日本の農業をサポートしていく」(阪井洋之ソーシャルクラウド事業開発室長)。

 農業生産管理SaaSの料金は初期費用と月額料金からなる。生産マネジメントは初期費用が5万円、月額費用が4万円(5ユーザーID)から。集約マネジメントは初期費用が5万円から、月額費用が10万円(10生産者)から。イノベーション支援サービスは個別見積もり。Akisaiについては今後、販売管理など他のアプリケーションを追加提供するという。

 2015年度までに生産農家、食関連企業、自治体、団体など2万事業者での利用、累計150億円の売上を目指す。また将来については国内だけでなく、アジア地域を主とした海外展開の意向もある。「例えば南米は畜産業が盛んで、大きなマーケットがある。中国やASEANだけでない世界展開を考えていきたい」(山中氏)。