写真●ゲーミフィケーションについて講演する国際大学GLOCOM客員研究員の井上明人氏
写真●ゲーミフィケーションについて講演する国際大学GLOCOM客員研究員の井上明人氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「ゲームには大きなエネルギーを生む魅力がある。正しく活用すれば、“ビッグデータ”の取り扱いなど、ビジネス分野でも効果を発揮する」。国際大学GLOCOM客員研究員の井上明人氏は2012年7月13日、ガートナー ジャパン主催のイベント「ガートナー ビジネス・インテリジェンス&情報活用サミット2012」で、「ゲーミフィケーションで、ビジネスはどう変わるのか」と題して講演した。井上氏はゲームデザインの研究者で、著書に『ゲーミフィケーション』(書評記事)がある。

 ゲーミフィケーションとは、楽しむこと以外が目的のビジネスやサービスに、ゲームの要素を組み込むことを指す(関連記事)。井上氏は講演の中でゲーミフィケーションをビジネスに役立てるうえで考慮するべきポイントを話した。

 例えば、2008年の米大統領選挙のときにバラク・オバマ氏(現大統領)の陣営が運営した「barackobama.com」には様々な形でゲームの要素が組み込んであった。オバマ氏の支持者が知人を紹介したり、クレジットカード番号を登録したり、少額でも実際にネット献金したりという小さな行動を起こすたびにポイントを獲得でき、レベルが上がっていく仕組みなどだ。これによってオバマ陣営はネット経由の個人献金を広く集めることに成功し、選挙戦勝利の原動力になった。

日常行動が計測可能に

 井上氏は、ゲーミフィケーションの本質は「計ること」だと説明した。例えば、古代オリンピックの時代の陸上競技は、選手が一斉にスタートして、ゴールした順にランキングする以外に方法が無かった。その後ストップウオッチやセンサーといった計測技術が発達したことで、同時にスタートしなくても順位付けできるようになったり、小差も判別できるようになった。ゲームとしての面白さが増し、オリンピック大会の規模も拡大した。

 計ることは最近までは特殊な装置がないとできなかったが、GPS(全地球測位システム)や加速度センサーなどを備えたモバイルデバイスと、これらを結びつけるインターネットの普及により、“ビッグデータ”として扱えるようになった。「ゲームをビジネスに役立てようという波はこれまでにもあったが、今回は、人の日常的な行動を低コストで可視化できる環境が整いつつある点で、過去の波とは大きく異なる」と井上氏は強調した。