写真●Imagine Cupで世界に挑んだ日本チーム。前列から、Coccolo、Team Blossom、Esperanza
写真●Imagine Cupで世界に挑んだ日本チーム。前列から、Coccolo、Team Blossom、Esperanza
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 米マイクロソフト主催の学生技術コンテスト「Imagine Cup 2012」世界大会でソフトウェアデザイン部門の日本代表が2位になるという、これまでにない好成績を収めた日本チーム(関連記事)。2012年7月12日に帰国した彼らは、スーツケースを抱えたまま日本マイクロソフト品川本社に集合し、報道陣を前に笑顔で大会の様子を報告した。

 Imagine Cup 2012には、ソフトウェアデザイン部門に東京工業高等専門学校のチーム「Coccolo」が日本代表として参戦したほか、ゲームデザイン部門で世界のトップ10に選ばれたトライデントコンピュータ専門学校の「Team Blossom」とバンタンゲームアカデミーの「Team Esperanza」がオーストラリア・シドニーで開催された世界大会に参加していた。このうち、ゲームデザイン部門でTeam Blossomが1回戦を突破してベスト5に選ばれ、ソフトウェアデザイン部門でCoccoloが世界第2位を獲得した。同部門で日本代表が決勝戦まで勝ち抜いたのは2006年以来のことで、入賞したのは今回が初の快挙だ。

 Coccoloのチームリーダー、大川水緒さんは、この大会を振り返り、「1位でなかったのは少し残念だが、決勝の場ではこれ以上ないほどのプレゼンテーションが披露できた。最後まで楽しもうという気持ちを忘れず、観客も巻き込んでノリのいいプレゼンができ、本当に楽しかった。できることはすべてやり切ったので悔いはない」と、晴れやかに語った。

 Team Blossomチームリーダーの馬場翔太さんは、ゲームデザイン部門でベスト5に残った理由を分析し、「日本のグラフィックデザインの完成度の高さ、そして“ブルーム*ブロック”が子供でも楽しめるゲームであること、また実際に幼稚園などでプレーしてもらい、子供たちの反応を検証したことなどが評価されたのだと思う」と述べた。一方、反省点としては、「ブラジルや韓国などのチームは前に出ていくパワーを持つ人たちが多かったが、自分たちのチームにはそれが無かった。今後はこのソリューションで世界を変えるという勢いを持ってやっていきたい」とした。

 ゲームデザイン部門の世界ベスト10として大会に出場したものの、残念ながら世界大会では一度も勝ち抜けなかったEsperanzaのチームリーダー、前川佳嗣さんは、「世界中に発信できるソリューションだと思ったが、インターフェースやユーザーエクスペリエンスのつめが甘かった」と振り返る。また、「プレゼンテーションでも、見た人に納得感や感動、そしてさわやかさを与えるようにすべきだと思った。その点、Coccoloのプレゼンは見ていて本当に楽しく、参考にしたいと思った」と、同じ舞台で戦ったCoccoloに対する感想を述べた。

Coccoloのプレゼンは「審査員の中でも断トツの好評価」

 事実、Coccoloのプレゼンテーションは審査員にも好評だった。2006年の同大会ソフトウェアデザイン部門でベスト6に残り、その後同部門で審査員を務めるようになった東京大学 知の構造化センター 特任助教の中山浩太郎氏は、「ソフトウェアデザイン部門の決勝に残った6チームのプレゼンテーションが終了した後の審査員の意見では、断トツで日本チームの評価が高かった。様々な指標で審査されるため優勝は逃したが、どのチームに対しても審査員の意見が分かれるなか、日本チームにネガティブな意見を言う審査員は誰もいなかった」と、審査員室での裏話を明かした。

 また、自身も2006年大会で決勝まで勝ち抜いたものの入賞には至らなかった中山氏は、「当時ソフトウェアデザイン部門世界大会に出場していたのは40~50チームだったが、それでも決勝に残ることは大変だった。現在ではそれが72チームにまで増え、しかも今回はここ数年の中で一番激しい戦いだと感じていた。その中で2位という成績を収めたことは快挙だ」と称賛した。「Coccoloの活躍を見て、次のCoccoloを目指す学生も出てくるだろう。いろんな人にインパクトを与える素晴らしい出来事だった」(中山氏)。

 審査員をもうならせるほどの元気の良さで注目されたCoccoloのプレゼンは、YouTubeにも公開されており、多くの観客がCoccoloに魅了されていることがわかる。「とにかく楽しいプレゼンにしようと心がけた」と、Coccoloのリーダー大川さん。今後Imagine Cupに挑戦する後輩へのアドバイスを求められた大川さんは、「とにかく自分たちのやりたいようにやってほしい。いやだと思ったり苦しい思いばかりするようであれば、1位を獲得してもいい思い出にはならないかもしれない。めったにできる体験ではないので、本気で楽しんでほしい」と語った。