写真●米ガートナー リサーチ バイスプレジデントのジェイミー・ポプキン氏
写真●米ガートナー リサーチ バイスプレジデントのジェイミー・ポプキン氏
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 「ビッグデータ分析をいち早く導入し、活用することで、企業は競争力をつけることができる」---7月12日より2日間の日程で開催されているガートナー ジャパン主催のイベント「ガートナー ビジネス・インテリジェンス&情報活用サミット2012」にて、米ガートナー リサーチ バイスプレジデントのジェイミー・ポプキン氏が「ビッグデータの全体像」と題し基調講演を行った。

 なぜいまビッグデータが注目されるのか。ポプキン氏はその背景として、データ量の増大、データの複雑化、それにともなう分析の複雑化など「破壊的な変化が起きている」ことを挙げる。同時に、オープンソースソフトウエアが受け入れられるようになり、Hadoopのようなオープンソースプロジェクトがビッグデータ分析のソリューションとして成長していることも、ビッグデータを活用しようとする動きを後押ししていると語った。

 従来のOLTP(オンライン分析処理)やCEP(複合イベント処理)、ODS(オペレーショナルデータストア)、EDW(エンタープライズデータウェアハウス)などとビッグデータは何が違うのか。ポプキン氏は「ビッグデータは意思決定スピードは速くなくてもよいが、処理の複雑性は高い。また、データ量は多く、そのほとんどが非構造化データであり、処理と分析の柔軟性は高い」と解説。こうした特性にあわせ、どのようなケースでビッグデータを活用すべきかを見極めるべきだとする。

 その上でポプキン氏は、ビッグデータに最適な活用パターン例をいくつか紹介した。例えば金融サービスでは、過去のクレジットカードの取引履歴から不正なパターンを見つけることができる。実際にポプキン氏は、ペルー出張時にクレジットカードを利用しようとした際、いつもとは違う国からの利用だったため不正利用が疑われ、認証が必要になったという体験をしたという。

 また、ヘルスケア業界では、財務分析や不正検出、さらには患者の治療計画のために、医療保険請求データを分析することが考えられる。ポプキン氏によると、保険会社連合の米ブルークロスブルーシールドアソシエーションでは、看護師が患者に電話問診し、患者の病気の進行状況や重症度をビッグデータで分析、近い将来病気が悪化する恐れのある患者に対し、診察を受けるよう促すという。こうすることで「患者が健康でいられることはもちろん、保険会社にとっても病気が重症化する前の方が医療費削減につながる」とポプキン氏は説明する。

 最後にポプキン氏は、ガートナーの提言として、「ビッグデータ分析とHadoopオープンソースプロジェクトを採用することで、変化するビジネスとテクノロジーがもたらす課題に対応できる。その際、技術面でのリスクを低減し、実装スピードを高めるため、パッケージ化されたHadoopディストリビューションを採用すべきだ。また、導入するHadoopプロジェクトは注意深く選択すること。概念を実証するためにクラウドでHadoopを利用するのも手だ」と述べた。ポプキン氏はさらに、ビッグデータ分析に取り組むにあたって、「IT部門と事業部門の双方を巻き込んだ共同プロジェクトにすべきだ」とした。