写真●日本NCRの担当者による「クラウド型RFID」の利用例。左手が店頭用のハンディー端末。右手の大型アンテナは倉庫用で、装置を背負いながら作業する
写真●日本NCRの担当者による「クラウド型RFID」の利用例。左手が店頭用のハンディー端末。右手の大型アンテナは倉庫用で、装置を背負いながら作業する
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 日本NCRは2012年7月10日、衣料品卸の住金物産と共同で「クラウド型RFID(無線ICタグ)店舗オペレーションシステム」を新たに構築したと発表した。9月から、衣料品・雑貨セレクトショップ大手のユナイテッドアローズの数店舗(グリーンレーベル リラクシング業態の店舗)で試験導入する。

 新システムは、(1)店頭のPOS(販売時点情報管理)レジに接続したRFIDリーダー/ライター、(2)入出荷用のハンディー端末、(3)棚卸作業用の大型アンテナ(写真)、(4)クラウド上のRFID管理サービス――で構成する。RFID管理サービスは日本NCRのデータセンター内にあり、インターネット経由でクラウドサービスとして提供。RFIDの状態管理や、既存システムとの連携処理などの機能はクラウド側が担当する。ユナイテッドアローズは既存の基幹情報システムに大幅な改良を加えることなく、新システムの機能を利用できる。

900メガヘルツ帯10円強のタグ採用

 小売業でのRFID導入では、タグ自体のコストと情報システムのコストが問題になりがちだ。まずタグ自体のコストについては、RFIDタグ自体は900メガヘルツ帯の汎用品を採用。RFIDタグのコストは年々下がっており、1個当たりの原価を10円強まで抑えた。洋服やバッグなど一定以上の単価の商品を扱うユナイテッドアローズにとっては許容範囲に収まる。

 情報システムのコストについては、クラウドコンピューティングの活用で解決した。「これまでは、RFIDシステムを新規に構築しようとすると大がかりな情報システムになりがちだった。RFID関連処理をクラウド側に受け持たせることで、小売店が導入しやすくなった」と日本NCR新規ソリューション推進グループの宮崎重信コンサルタントは説明する。

 RFIDタグは紙のブランドタグにあらかじめ貼り付けておき、ブランドタグと一緒に商品に取り付ける。商品を店舗に入荷する時は、店員がハンディー端末を商品にかざすと検品が完了する。従来のバーコードを探して読み取る作業に比べてスムーズだ。店内での商品棚卸しもハンディー端末を棚にかざすだけで完了する。

 店員が商品を並び替えたり、来店客が試着してから棚に戻したりといったこれまでは把握できなかった「商品の動き」を新たに追うことができる。ユナイテッドアローズはPOSデータに加えて、RFIDから得られるデータも活用して、品ぞろえや販促の充実を図ることができる。