写真1●エネルギー使用量管理クラウドサービスを担当する日立製作所インフラシステム社社会情報システム部の加藤裕康担当部長
写真1●エネルギー使用量管理クラウドサービスを担当する日立製作所インフラシステム社社会情報システム部の加藤裕康担当部長
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 日立製作所は2012年7月11日、電力使用量などを管理する企業向けクラウドコンピューティングサービス「EcoAssist-Enterprise-Light」に、複数拠点のエネルギー使用量を統合管理できる新機能を追加すると発表した。7月18日から販売を開始する。特に電力に関する機能を強化し、夏冬に予想される電力需給逼迫(ひっぱく)に備える企業の利用を見込む。

 新機能では、企業のビルや工場などに備え付けられた検針機やBEMS(ビルエネルギー管理システム)など、製造元や仕様が異なる様々な装置からデータを取得して一元管理できる。取得したデータは日立が用意するクラウドコンピューティング環境を通じてほぼリアルタイムで集計し、「ピーク時1時間の使用電力」「電力会社別使用電力」など、顧客企業が管理しやすい形に加工して提供する。グラフや表計算ソフト用データといったデータ形式だけではなく、社内ホームページに貼り付けやすい画像を自動配信するといった機能も備え、顧客企業内で節電を呼びかけやすいようにする。

 省エネ法施行などを背景に、企業向けに様々なエネルギー管理サービスが出ている。ただし、工場・事業所などの拠点ごとの管理しかできなかったり、複数拠点を一元管理できても集計タイミングが1カ月後になったりするサービスが少なくない。いずれも省エネルギーや光熱費削減という目的には役立つが、急な節電要請・計画停電や節電報奨金の獲得など、長引く電力不足で生じた新たな状況には対応しにくい。

顧客企業の電力使用量把握レベルを向上

 日立製作所インフラシステム社社会情報システム部の加藤裕康担当部長(写真1)は、「これまでは電力会社がピークに合わせて供給してくれていたが、今は、企業が自分でピークをコントロールして電力使用量削減に協力することが求められる」と説明した。

 新機能は、顧客企業が電力使用量の把握するレベルを向上させ、新たな状況に対応しやすくすることを狙っている。例えば、関西電力は2012年夏場に大口顧客向けに「ネガワットプラン」などの割引・報奨金制度を打ち出している。これらの適用を十分に受けるには、1日ごとや1時間ごとといったレベルで複数拠点の電力使用量全体を把握できる体制が必要になる。2012年冬場以降にも、電力会社ごとに同様の制度が打ち出される可能性がある。ピーク時電力需給推移に柔軟に対応できる企業にとっては、コストダウンの機会が増えるという見方もできる。

 日立のサービスは広範囲に拠点を持つ企業、地方自治体、大型商業施設などの利用を見込む。価格は初期費用が500万円~、2年目以降100万円~の利用料がかかる。利用開始までの期間は最短で1カ月程度だが、拠点で電力使用量を把握する仕組みが特殊な場合は、調査や作業に時間がかかることがある。

日立社内238カ所で稼働、10万kW抑制目指す

写真2●EcoAssist-Enterprise-Lightを日立グループ内で利用している画面。電力会社別の需給状況が一目で分かる
写真2●EcoAssist-Enterprise-Lightを日立グループ内で利用している画面。電力会社別の需給状況が一目で分かる
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 日立グループ自身も2012年6月から全国の拠点のうち電力使用量が多い238カ所を対象に、EcoAssist-Enterprise-Lightをベースとした「日立グループ電力データ集計システム」を稼働させた(写真2)。グループ全体で夏のピーク時に電力使用量10万キロワットの抑制を目指す。

 238拠点は東京電力や関西電力など電力7社にまたがっており、それぞれの電力会社の管内におけるおよそ1時間前の電力使用量が一目で分かるようにしている。