写真●左から、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス ヘッド・オブ・コミュニケーションの伊藤征慶氏、英Volans エンゲージメント・マネージャーのアマンダ・フェルドマン氏、損害保険ジャパン CSR・環境推進室 室長代理の市川アダム博康氏
写真●左から、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス ヘッド・オブ・コミュニケーションの伊藤征慶氏、英Volans エンゲージメント・マネージャーのアマンダ・フェルドマン氏、損害保険ジャパン CSR・環境推進室 室長代理の市川アダム博康氏
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 環境問題、貧困問題、高齢化社会、男女格差の是正などの社会的な課題に対して、企業はどう取り組むべきか。2012年7月9日、東京都内の日本財団ビルにて、「なぜ今、企業が社会イノベーションに取り組むのか」と題したフォーラムが開催された。

 社会イノベーションの定義は大きく言えば、新しい枠組みやアプローチによって社会的な課題の解決をはかること。このフォーラムでは、「事業の実行力を持つ企業こそ積極的に社会イノベーションの創出に取り組むべき」という問題意識のもと、パネルディスカッションやワークショップが開催された。ここではパネルディスカッションから、企業の業務改革や人材育成、事業創出に有効と思えるポイントを紹介する(写真)。

インドで安い石けんを提供し将来の種をまくユニリーバ

 日用品大手の英ユニリーバは、ビジネスと社会イノベーションを一体化させた取り組みを進めている企業の1社だ。パネルディスカッションに登壇したユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの伊藤征慶 ヘッド・オブ・コミュニケーションは、グローバルで取り組んでいる「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を紹介した。

 ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランとは、ユニリーバのビジネス開発と、環境保護やコミュニティの支援などといった社会問題の解決を同時に実現するための取り組み。売り上げを2倍にしながらも製品の環境負荷を半分に減らすこと、10億人に正しい手洗いの習慣が身につくよう支援すること、サプライチェーンに小規模事業者を加えて地域の暮らし向上を支援しつつビジネスを成長させること、などの小目標で構成する。

 具体的な行動として、インドで展開している「プロジェクト・シャクティ」を紹介した。これはインドの村落地域における衛生状態の改善と生活レベルの向上を、ビジネスの一環として支援するプロジェクトである。

 このプロジェクトにおいてユニリーバは、村落地域に向けて1ルピーの安い石けん商品を開発した。「都市部向けの商品は、村落地域の人には高くて買えないため」(伊藤氏)。併せて、子どもを中心に衛生的な生活習慣を身につけてもらうために紙芝居を用意。さらには、村落地域に販路を確保するため地域の女性に販売代理店(シャクティ事業者)になってもらうという施策を実行した。売り上げの一部を女性に還元し、女性の地位向上と生活支援をするのが目的である。

 このプロジェクトを実施した結果、石けんの届け先は300万世帯に増えた。シャクティ事業者は現在4万5000人に増え、現地の収入レベルが上がってきたという。「ビジネスとして見ると決してマージンが大きいわけではない。だがユニリーバとしてはこうした社会的な取り組みが重要だと認識しているし、将来はこうした地域の収入レベルがアップして、有望な顧客になると見込んでいる」(伊藤氏)。ユニリーバはこの取り組みを世界各地で横展開する計画だという。