中堅以上の国内企業の4社に3社が「クラウドサービスを積極的に活用するべき」と考えている――。調査/コンサルティング会社のアイ・ティ・アール(ITR)はこうした調査結果をまとめた。国内でも、次世代IT基盤の選択肢としてクラウドが完全に定着したことが数字で示した格好だ。特にITアウトソーシングを積極的に推進する企業での“クラウド推進派率”は9割を超える。アウトソーシング事業者側もクラウドへの一層の備えを迫られそうだ。

 この調査は2012年6月8~11日、従業員数500人以上の国内企業におけるクラウド戦略策定の関与者を対象にインターネット経由で実施し、652件の有効回答を得たアンケート結果をまとめたもの。まず、今後に向けたIT戦略の方向性として「クラウドサービスを積極的に活用すべき」と考えているかどうかを尋ねたところ、回答者の77.8%が「そう思う」と答え、“クラウド推進派”に名乗りを挙げた。別の設問で「ITアウトソーシングを拡大する」と答えたアウトソーシング推進企業に限ると、“クラウド推進派率”は90.1%に達した。アウトソーシング非推進企業のクラウド推進派率が54.8%だったので、顕著な差が出た(図1)。

図1●クラウドサービスの活用方針
図1●クラウドサービスの活用方針
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 調査からは、クラウドの波は基幹系システムにも押し寄せていることも分かった。会計システムを例に取ると、現在時点では回答者の75.3%が「非クラウドによる個別構築した基盤」、すなわちオンプレミス環境で動かしている。しかし今後は、この比率が48.8%まで下がる。代わって43.0%が各種のプライベートクラウド環境を、8.3%が各種のパブリッククラウド環境を利用するようになる(図2)。

図2●会計システムにおける構築・運用形態の変化
図2●会計システムにおける構築・運用形態の変化
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 クラウド推進派の回答者507人には、アウトソーシング事業者に求める能力についても尋ねた。その結果、クラウドへの対応力を重視するとした回答が多数を占めた。とりわけ、「コンサルティング・サービス」「移行サービス」「プライベート・クラウド・サービス」を重視する傾向が強かった(図3)。

図3●アウトソーシング事業者に求める能力
図3●アウトソーシング事業者に求める能力
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 今回の調査結果をITRの舘野真人シニア・アナリストは、「IT資産の最適配分や統合化の促進、運用業務の効率化といった幅広い視点から、クラウドサービスに高い期待が寄せられていることが確認できた」とコメントする。一方、アウトソーシング事業者に対しては、「強固なインフラ環境を備えるだけでなく、戦略作りからシステムの移行作業、本稼働後の運用業務に至るまで、広範囲なサポート体制の整備が望まれる」と注文を付けた。