NTTドコモが、2012年7月5日から6日にてパシフィコ横浜で開催された無線技術関連の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2012」で、HetNet(Heterogeneous Network)シミュレーションの最新デモを披露した。
HetNetとは携帯電話技術の標準化団体3GPPにて、リリース10にて標準化された技術。通常の基地局がカバーするマクロセルにオーバーレイする形でピコセルやフェムトセルといった狭い範囲をカバーする基地局を配置し、両者が協調することでネットワーク全体のキャパシティーを改善できる(関連記事)。
ドコモは昨年のWTPなどでもHetNetのシミュレーションを披露している。今回のデモではLTE-Advancedのその先を3GPPリリース12以降を見据えて、マクロセルの中にスモールセルを敷き詰めると、HetNetでどこまで容量を拡大できるのかをシミュレーションにて披露した(写真1)。
シミュレーションの構成は、マクロセルに2GHz帯を20MHz幅利用システムを利用。そのマクロセルの中に3.5GHz帯で200MHz幅を使うスモールセルをどんどん増やしてく形を取る。なおリリース10で規定されたLTE-Advancedは、最大100MHz幅の帯域のシステムであるため、この点でLTE-Advancedのスペックを超えていることになる。
デモでは、最終的に一つのマクロセルの中に30個のスモールセルを配置。この状態では、マクロセルだけの場合と比べて、スループットの合計値は約224倍にも達する様子を見せた(写真2)。
3.5GHz帯付近をスモールセルに使う動き
「ファントムセル」「ブースターセル」という呼び名も
ドコモが今回のシミュレーションで見せた、これまで利用してきた2GHz帯や800MHz帯近傍をマクロセルとして利用、比較的高い周波数帯である3.5GHz帯近傍をスモールセルに使うのは、世界的な流れになっているようだ。2012年6月には3GPPにてLTE-Advanced以降のリリース12の方向性を議論するワークショップが開催されたが、ここではこのようなスモールセルを構成する「ローカルエリア」について多くの提案がされたという(関連記事)。
例えばドコモはスモールセルについては、マクロセルほどハンドオーバーや制御チャネルの機能は求められないとして、マクロセル側でこれらの機能をカバー。スモールセルはより効率的にデータ伝送の役割だけを担わせるような提案をしたという。ドコモではこのようなスモールセルのコンセプトを「ファントムセル」と呼んでいる(写真3)。なお海外の大手ベンダーもほぼ同様の方向性を見せているといい、例えばスウェーデンのエリクソンはマクロセルを「アンカーセル」、スモールセルを「ブースターセル」と呼んでいるという。