写真●IT Japan 2012で講演する日本IBMの鴨居達哉氏(写真:中根祥文)
写真●IT Japan 2012で講演する日本IBMの鴨居達哉氏(写真:中根祥文)
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 「日本のCEOは世界のCEOと比較すると、テクノロジーやテータ活用による業務変革に対する意識に差がある」――。日本IBMで常務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業 コンサルティング・サービス 兼 ビジネス・アナリティクス&オプティマイゼーション担当を務める鴨居達哉氏はこのように述べ、テクノロジーによる経営変革の重要性を訴えた。日経BP社が2012年7月4日から6日にかけて東京・品川プリンスホテルで開催したイベント「IT Japan 2012」の中で「成長への挑戦 - テクノロジーは何を変革するか」と題して講演し、このように語った。

 鴨居氏はまず、日本の競争力が低下している点を指摘。「1990年代前半は日本の国際競争力はトップ。それが20年後の今は26位まで低下した」(鴨居氏)。同様にGDP(国民総生産)の低下も指摘し、日本企業の経営変革の必要性を強調した。

 競争力低下を指摘する一方で、IBMが調査した、全世界のCEOへの調査結果から競争力を高めるヒントが見えると続けた。

 具体的には、経営に最も影響を与える外部要因を問うたところ、世界のCEOが「テクノロジー」を挙げたのに対して、日本のCEOは「市場の変化」が1位、「グローバル化」が2位となった。「日本のCEOは、テクノロジーへの意識が4位だった」。

 世界のCEOは、グローバル化からテクノロジーへと意識が移っており、「競争力を高めるには、テクノロジーによる経営変革が不可欠。裏返せば、まだまだ日本企業は成長できることの表れでもある」と述べた。

クイズ王に勝った「ワトソン」の意義

 テクノロジーをどのように経営変革に生かすのか。鴨居氏の提言は、テクノロジーによる経営変革に移った。

 ここで挙げたのは、IBMが開発した「ワトソン」と呼ぶ認知型コンピュータ。ワトソンは、膨大なデータ(ビッグデータ)を蓄積し、自然言語を解析して人間の質問に対して答えを出す。「メディアでは米国のクイズ王と対戦して勝利を収めたことを大きく伝えたが、本質はそこではない。認知型コンピュータは、あらゆることを変革するインパクトがある」。

 認知型コンピュータの利用場面として、保険会社における請求内容の分析業務を紹介した。医師や保険担当者のナレッジを膨大なデータとして蓄積し、それと請求内容をマッチングして不正請求かどうかを見極めるものだ。「ビッグデータと認知型コンピュータの活用によって、今後あらゆる場面でデータ活用が進むことは間違いない」との展望を示した。

 ビッグデータについては、今後の可能性にも言及した。「顧客情報の分析に目が向けられているが、(先の保険会社のような)異常の検出、サプライチェーンの高度化など、幅広い分野で活用できる」。さらに「IT投資はバックオフィスからフロントオフィスに移っている。データ活用、とくに顧客情報の活用によって新しいマーケティングやコマースが広がっている」と語った。

■変更履歴
本記事のタイトルおよび本文の一部を、より適切な表現に修正しました。 [2012/07/11 19:00]
■変更履歴
「鴨居氏」の名前が1カ所間違っていましたので修正しました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2012/07/09 11:50]