写真●IT Japan 2012で講演する慶応義塾大学の竹中平蔵教授(写真:中根祥文)
写真●IT Japan 2012で講演する慶応義塾大学の竹中平蔵教授(写真:中根祥文)
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 慶応義塾大学教授でグローバルセキュリティ研究所所長の竹中平蔵氏は2012年7月6日、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2012」において「グローバル経済と日本の進路」と題して講演した(写真)。小泉純一郎政権で金融相や総務相などを務めた経験を基に、日本の政治状況に切り込みながら、ITと経済情勢の関係を解説した。

 竹中氏は、『ツイッターを持った橋下徹は小泉純一郎を超える』(真柄昭宏著、講談社)という書籍を引き合いに出して、ITの浸透が政治にも大きな影響を与えている現状を指摘した。

 「私が“公人”だった当時は、マスコミを通して私の発言が伝わるために、マスコミから批判される時は一方的に批判されるしかなかった。今はTwitterがある。(大阪市長の)橋下徹さんは批判した記者に対して『A記者は不勉強だ』『B記者は会見に来ていないのに記事を書いている』などとTwitterを通じて反撃している。これは新しい現象だ」と述べた。

 ITは経済にも大きな変化を及ぼしているという。竹中氏は、グローバル化とITによる「デジタル革命」が並行して進むことで、デジタルデータが世界中でやり取りされるようになっていると指摘。「世界はフラット化している。東京の仕事を沖縄でやっても、中国やブラジルでやっても同じなのだから、コストは安い方に収れんする。『今日の給料より明日の給料が安い』のは、グローバル化とデジタル革命の当然の帰結だ」と述べた。

 加えて、「こうした実情を踏まえずに、とにかく『国民の生活が第一だ』といった政治が横行している。フラット化したといっても東京は大きな経済圏で、成長のための手立てはいくらでもある」と辛口で指摘した。