写真●アクセンチュア 代表取締役社長の程 近智氏(写真:中根祥文)
写真●アクセンチュア 代表取締役社長の程 近智氏(写真:中根祥文)
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 「エンタープライズITがコンシューマITと融合する段階に入った。企業も発想の転換が必要」。東京・品川で開催中の「IT Japan 2012」で、アクセンチュア 代表取締役社長の程 近智氏(写真)はこう語った。講演のタイトルは「ICT二流国への転落の回避─コンシューマーITを梃子にした改革─」。企業がITを今後どう活用すべきかを訴えた。

 程氏は、2007年から2012年までにITのトレンドがどのように移り変わってきたのかを示した。FacebookやTwitter、スマートフォンに代表される「コンシューマIT」が急速に進化し、従来の企業価値を生み出してきた「エンタープライズIT」と融合する段階に入ったと指摘した。コンシューマITはビジネスでの価値を増し、イノベーションを生む源となっている。一方で従来のエンタープライズITは重くコストも掛かる。「重いエンタープライズITを変えないとICT二流国へと転落する」と程氏は警告した。

 コンシューマITを企業で活用する際にに重要なポイントとして、程氏は(1)商品のIT化、(2)顧客経験価値の向上、(3)データ重視のリインテグレーション、(4)レガシー構造改革、(5)エンタープライズIT人材の転換──の五つを挙げた。

 (1)商品のIT化では、スマート家電など商品にITで付加価値を付ける取り組みなどを紹介した。程氏はこうした「ITで商品をラッピングするという概念が大事」と説く。(2)顧客経験価値の向上では、文脈を理解してサービスを提供するコンテクストベースのサービスなどがあるという。

 (1)と(2)を実現するための裏方として必要なのが、(3)データ重視のリインテグレーションである。企業内の分散されたデータを使い倒すことや、メタデータ(データに付随した情報)にも注目することなどが重要になる。(4)レガシー構造改革では、企業が保有するシステムのうち約2割を占める基幹ITをリストラすべきとした。この(4)を実行することにより、システム部門も大きく変わっていく。程氏は「システムを減らすことで余ったシステム部の人材は、グローバル対応やコンシューマIT対応など戦略的な部門へ配置すべき」と述べた。

 大局を捉えたうえでの発想転換に加え、「選択」も重要だと程氏は指摘。ユーザー企業の経営者に対しては、ICT部門が自社にとってコア(中核)なのかノンコアなのか位置付けを再考し、それによって戦略を考えるべきとした。講演のまとめとして程氏は、大局観、選択、スピードの三つを掲げ、「エンタープライズITがコンシューマITと融合し、もしかしたらコンシューマITに追い抜かれる、という大局観を持ってほしい。さらに、ICTが自社のコアかノンコアかといった選択、ICTは10年で寿命が来るというスピードを考慮して動いてほしい」と語った。