写真●NEC 代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO 兼 CIO 新野 隆氏(写真:中根祥文)
写真●NEC 代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO 兼 CIO 新野 隆氏(写真:中根祥文)
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 「人と地球にやさしい情報社会の実現に貢献したい」。2012年7月4日から6日まで東京・品川で開催中の「IT Japan 2012」で、NEC 代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO(チーフストラテジーオフィサー)兼 CIO(チーフインフォメーションオフィサー)の新野隆氏(写真)は、こう語った。

 現在、エネルギー、食糧、水などの需要が世界的に急増している。新野氏は、この問題に対処するには、エネルギー、食糧、水などの無駄を改善する「スマートな社会インフラの実現が必須だ」と訴えた。さらに、その社会インフラは「クラウドサービス」「クラウド基盤」「クラウド端末・センサー」の三層で構成され、「(1)予知・予測」「(2)予防・行動支援」「(3)どこでも利用可能」という価値を創出するとした。

 「(1)予知・予測」「(2)予防・行動支援」「(3)どこでも利用可能」とは、具体的にどのようなものか。新野氏は、テクノロジーの進化によって近未来に実現するサービスの例を、それら三つの価値ごとに示した。

 まず「(1)予知・予測」では、自動車運転者の居眠り防止を挙げた。自動車内に備え付けカメラで運転者の顔を撮影し、まばたきの回数や表情の変化を解析することで、居眠りしそうな予兆が見られた時点で警告する、というものだ。

 続いて「(2)予防・行動支援」では、洗面所にカメラや温度センサーなどを備え付けておき、利用者の疲労度合いを解析した上で、必要に応じて休養や睡眠を促すメッセージを鏡に映し出す、という例を挙げた。さらに、自動車の各部品に仕込んだセンサーによってそれらの状態をメーカーに送信しメンテナンスを行う、という例も示した。

 最後の「(3)どこでも利用可能」については電力網を取り上げ、有事の際には、民間企業の電力を病院などに融通する例を挙げた。また、旅行者が街並みに対して透明なプレートをかざすと、レストランや興行イベントの情報が街並みの建物の上に表示される、という構想も紹介した。

 このようなサービスを可能にする社会インフラをこれから構築していく上で、NECには強みがあるという。新野氏はNECの事業のなかでも、電池・エネルギー、情報セキュリティなどの優位性を強調した。電池・エネルギーに関しては、1990年代に着手したという蓄電池開発の先行者利益を強調した。その結果の表れとして、自動車用リチウムイオン電池の市場において売上高ベースでシェア26%を占め、世界トップに立っていることを示した(NECグループが日産自動車と共同出資するオートモーティブエナジーサプライの売り上げを含む)。

 情報セキュリティについては、シンガポール空港の電子パスポートシステムや南アフリカ共和国の国民IDシステムなど、30カ国を超える480以上のユーザーに、指紋認証をはじめとする生体認証ソリューションを提供しているという。

 また新野氏は、スマートな社会インフラを実現する上で有用なNECのプロダクト・サービスを挙げた。PCやスマートフォン、タブレットなどの情報端末、電波や光波などの各種センサー、それらのセンサーや産業用設備を結びデータ連携させるM2M(Machine to Machine)のネットワークインフラ「CONNEXIVE」、ソフトウエアによってネットワーク構成を組み替えたりデータの流れを制御したりできる「OpenFlow」対応のネットワーク機器といった具合だ。

 そして最後に、「いつでもどこでも誰もが使えるサービスにより、安心・安全・便利で豊かな個人生活を実現する」「限りある資源を効率的に活用し地球環境と共存持続的な発展を可能とする」という目指すべき情報社会のコンセプトを示した。