写真●LIXILグループ社長兼CEO(最高経営責任者)藤森義明氏(写真:中根祥文)
写真●LIXILグループ社長兼CEO(最高経営責任者)藤森義明氏(写真:中根祥文)
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 「世界共通で人材を評価する仕組みを進めている」。2012年7月4日から6日まで東京・品川で開催中の「IT Japan 2012」で、LIXIL(リクシル)グループ社長兼CEO(最高経営責任者)の藤森義明氏(写真)は「グローバル化におけるリーダーシップの重要性」と題して基調講演し、同社のグローバル戦略を披露した。これまで同社のグループ企業は国内での事業がほとんどだったものの、過去3年で米国や中国の主力企業を買収したりと中国家電メーカーと業務提携を進めてきた。電機と建材を融合するビジネスの形を、まず中国で作っていくと語った。

 同社は執行役員の報酬制度を業績連動に変え、基本報酬に加えて業績によって変わるボーナス、企業価値に連動するストックオプションの3本立てを全世界共通の仕組みにして、結果を出す人や、人を引き付ける人材を大切にしていくという。藤森氏が25年間在籍した米GEではリーダーシップ教育に年間1000億円近くを投じていたが、LIXILでも同様な仕組みを作る。国内の研修所を改築、MBA(経営管理修士課程)に毎年10人送り出すなど、若手・中堅幹部の教育を始めているという。

 藤森氏はグローバル化の課題として3つを挙げた。1つはグローバル人材の不足。2つめは買収した企業の多様なグローバル人材をいかに活用するか。3つ目が人事や経理システムの統合である。その上で、人材の多様性を維持しながら公平な機会を設け、常に高いレベルを目指す企業文化が必要と指摘。変革を起こす仕組みを教育し、それぞれ果たすべき約束に責任を負う強い決意や意思であるコミットメントを生み、経営のビジョンに共感してもらい、いかに実行に移すかがリーダーの役目と語った。

 特に中国については、中国に行かなければアジアに行ったことにならず、アジアで成功しないと世界での成功にならないと指摘。無視できないマーケットである中国に生産工場やショールームなどの営業拠点を増やしているという。

 一方、国内事業については電力エネルギー問題に着目している。実質GDP(国内総生産)と比べた最終エネルギー消費は産業部門などで減っているものの、住宅や商業施設などの民生部門は増えている。そこで太陽光発電によるエネルギーの自給自足や、エネルギー効率の高い建材などの要素技術を組み合わせて、2020年には新たな住宅の実現を目指すとした。

 藤森氏は経営統合から1年経過したあとの次の課題として、「業務フローの改善やITをそろえて行かなければならない」と明かした。グループ企業間の生産拠点や製品の重複をなくしオートメーション化を推進すること、本社機能やIT部門を統合することも必要という。

 「統合はITを整えてからやるべきではなかったか、という反省点もある」と藤森氏は悔やむ。統合してからITの整備が始まったため、受注や見積もりシステムがなかなか統合できず、見積もりに時間がかかり、一時はシェアが10ポイント低下。現場の混乱によるコストが発生して業績低迷の一因となったと明かした。経理や人事のシステムもまだ完璧ではないという。

 米GEでは組織変更があっても、過去5年間さかのぼって部門が存在していた場合のシミュレーションをもとに議論ができたという。LIXILグループでも今年から過去の業績を分析できるようになったものの、今後は月初に1カ月分の予測と前月の業績数値を1週間で出せるようにするという。ベストな状態は、リアルタイムで過去の分析や将来の業績予測が可能となり、より早い経営判断ができることだと述べた。

 その上で、ITの役割は「言われたことを単に達成するのではなく、社長やCFO(最高財務責任者)らが中心になって業務フローの改善を始め、ITシステムが業務フローをサポートできるようになることが大事」だと指摘した。