写真●アサヒグループホールディングスの本山和夫代表取締役副社長(写真:中根祥文)
写真●アサヒグループホールディングスの本山和夫代表取締役副社長(写真:中根祥文)
[画像のクリックで拡大表示]

 情報システムを活用し、顕著な成果をあげている企業を表彰する「IT Japan Award 2012」のグランプリに、アサヒグループホールディングス(HD)の「3Gプロジェクト」が輝いた。

 同社は2010年から基幹系システムの刷新を3Gプロジェクトとして推進、統合情報基盤の構築に取り組んでいる。2012年7月4日、受賞にあたり、同社の本山和夫代表取締役副社長が東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2012」で講演した。

 アサヒグループHDは食品企業でグローバルトップ10に入るという目標のもと、グループ企業の相乗効果を発揮するために基盤システムやデータベースを統合。M&Aで海外企業を傘下に収める際も、速やかに情報基盤に取り込めるようにした。クラウドを使ってコストや開発期間を圧縮している点や、本山副社長自らCIO(最高情報責任者)を務めてITガバナンスを強化している点も受賞のポイントとなった。

 「全社の経営課題とITを連動させる」と本山副社長は話し、同社が目指すグローバルな経営戦略を実現するために、ITにおける取り組みが不可欠であることを強調した。

 本山副社長はアサヒグループHDのIT施策として、(1)グループ共通基盤の構築、(2)ITガバナンス、(3)アプリケーションの集約、(4)グループ統合システムの構築――の大きく4点を挙げ、説明する。

 グループ共通基盤の構築については、酒類や飲料、食品など事業領域ごとにバラバラだったデータの持ち方や会計システムを統一。グループ全体で同一の基盤を構築し、利用していこうという試みだ。「酒類と飲料については既に統合を完了し、食品についても段階的に進めている」(本山副社長)という。

 ITガバナンスの強化に関しては、2011年に持ち株会社を設立。事業会社ごとに所有していたIT資産をアサヒグループHDに集約した。アサヒグループHDが一元的に資産管理することで、ITシステムの投資、維持コストの最適化を図る。IT人材も、事業会社からアサヒグループHDおよび子会社のアサヒプロマネジメントに集めて育成する。

 各事業会社や業務ごとに乱立しているアプリケーションも集約する。「今までは各事業会社ごとに、パッケージソフトウエアや自社開発のアプリケーションを準備していた」(本山副社長)が、酒類と飲料など親和性の高い事業分野で共通化する。

 グループ統合システムの構築にも取り組む。例えば、共同配送を実現する「グループ統合倉庫管理システム」を構築した。従来は配送関連のシステムも各事業会社が所有していた。「仮に共同配送を実施したとしても、商品の補充やピッキングをシステムで共通管理しなければ、効率は上がらない」と本山副社長は話す。グループ全体で共通して管理できる仕組みを整えることで効率的な共同配送を実現し、コストを削減する。

 本山副社長は、IFRS(国際会計基準)を既に適用しているオーストラリアの拠点で連結会計パッケージを開発するなど、将来的なビジョンにも触れ、「長期目標を意識しながら、IT戦略を実践していく」と講演を締めくくった。