写真●「IT Japan 2012」で講演する富士通の佐相秀幸副社長(写真:中根祥文)
写真●「IT Japan 2012」で講演する富士通の佐相秀幸副社長(写真:中根祥文)
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 「経験や直感に頼れない時代がやってきた今こそ、ICTの出番だ。ICTが生み出す知見を元に、ビジネスプロセスを変革し、新しいビジネスを開拓する必要がある」。富士通の佐相秀幸副社長は、日経BP社が2012年7月4日から6日にかけて東京・品川プリンスホテルで開催中のイベント「IT Japan 2012」で、このような見方を示した(写真)。

 近年、ICT産業の市場構造は、短期間で激変するようになった。典型的な例が携帯電話市場であり、スマートフォンがわずか数年で、従来型のフィーチャーフォンを駆逐した。佐相副社長は、「スマートフォンが日本に上陸した2008年当時、富士通で携帯電話事業を担当していた私は、メディアの取材などに対して『スマートフォンは日本市場でも一定のポジションを確保するだろうが、ユーザーインタフェースが一変しているので、従来の携帯電話機も残り続ける』と語ったものだった。今思えば、不明の至りだった」と自らの経験を語り、ICT産業において“経験や直感”に頼れない時代が来ていることを説明した。

 佐相副社長は、「ICT産業で起きたことが、これからはICT以外の全ての産業でも起きる」と語り、あらゆる企業が“経験や直感”に頼らない経営体制を確立すべき時期が来たと指摘する。企業がビジネスを変えていくうえで、“経験や直感”に代わって頼りにすべきものは、「ICTが生み出す知見」(佐相副社長)だ。

 知見を生み出すICT技術として富士通が注力している領域の一つが、高度なシミュレーションだ。例えば、「スーパーコンピュータ『京』が到達した10ペタフロップスというコンピュータパワーを使えば、患者の心臓の動きをシミュレーションし、心臓手術の完全な計画を事前に立てるといったことが可能になる」(佐相副社長)。

 佐相副社長によれば、スーパーコンピュータで世界1位の性能水準は、6年経つと一般的なサーバーで実現可能な水準になるという。つまり2018年頃には、10ペタフロップスのスーパーコンピュータが、誰にでも入手可能な存在になる。今後、高度なシミュレーションの活用が、様々な産業領域に広がるとの見通しを示した。