写真●日本ヒューレット・パッカードの小出伸一代表取締役社長執行役員(写真:中根祥文)
写真●日本ヒューレット・パッカードの小出伸一代表取締役社長執行役員(写真:中根祥文)
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 「ITは企業、個人、そして社会を支える重要な役目を担う。それを支援するためにHPはテクノロジーに回帰する」。日本ヒューレット・パッカード(HP)の小出伸一代表取締役社長執行役員は2012年7月4日に開幕したイベント「IT Japan 2012」の講演で、今後の同社の方針についてこのように表明した(写真)。

 「この5年間でR&DやM&Aに500億ドルを投じてきた。その中で生まれたテクノロジーを有効に活用できるよう、製品やサービスの形に整えて提供していく」と小出社長は話す。HPがテクノロジーの開発や提供に特に注力するのは、「クラウド」「セキュリティ」「ビッグデータ」「次世代インフラ」「アプリ変革」の5分野である。小出社長はこのうちの3分野の取り組みに言及した。

 まずクラウド分野においては、HPは異なるサービスや技術基盤を使って構築された複数のクラウドを統合的に管理する技術を提供する。同社が「HP Converged Cloud」と呼ぶ取り組みだ。

 小出社長は「企業の中に複数のクラウドが生まれているケースが少なくない。多くの経営者が、クラウドのガバナンスにリスクを感じている」と指摘する。HPは、複数の異なるクラウド基盤を提供し、企業の適正な運用を支援する。

あらゆる種類のデータを活用できる

 二つめの注力分野であるビッグデータの領域では、HPの持つ技術でさまざまな種類のデータを活用できるようになってきたという。ここでいうデータとしては、データベースなどを使って構造化されたデータと、動画や音声、ソーシャルメディアなどをはじめとする非構造化データがある。これらを大量に収集し、リアルタイムに分析できるようになった。

 小出社長は「特に分析が難しいのは、年率62%で増加しているといわれる、非構造化データだ」と話す。この非構造化データの活用に役立つのが、HPが2011年10月に買収を完了した英オートノミーの技術だ。

 例えば、映像の中で映ったサングラスや携帯電話を認識し、メーカーのWebサイトを表示したり、タグを付与したりできる。すでに警察や放送局など、グローバルで6万5000社が利用しており、実績は豊富だ。

 このオートノミーの技術を活用したアプリもある。iPhoneやiPad向けに提供しされているAR(拡張現実)アプリ「Aurasma」である。Aurasmaを起動すると、カメラに映った映像をリアルタイムに分析。あらかじめ指定されていたロゴやパンフレットなどを確認すると、それに関連するデータをクラウド上のサーバーから取得し、表示する仕組みである。

 三つめの注力分野は、セキュリティである。「HPは、企業が必要とするセキュリティ技術をグローバルで幅広く提供できる」(小出社長)。侵入防止システム「TippingPoint」や、ソフトウエアのソースコードにある脆弱性を検知する「Fortify」、複数種のログを相関分析する「ArcSight」といった製品を提供する。

 さらに小出社長は今後に向けた取り組みとして、同社が推進する「Project Moonshot」にも言及した。4Uのきょう体に288のサーバーを搭載可能な、「超スケールアウトサーバー」を開発中だ。従来のサーバーと比較すると、消費電力は89%、スペースは94%削減できる。

 このプロジェクトで開発したサーバー製品は、すでに米国で提供しているという。「こういった革新的なテクノロジーを提供することで、ビジネスを支援していきたい」と小出社長は話す。